研究課題/領域番号 |
23655072
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
床波 志保 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (60535491)
|
研究分担者 |
飯田 琢也 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (10405350)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | バイオセンサ / 光検出 / ラベルフリー / 金属ナノ粒子 |
研究概要 |
従来法による酵素や抗体、DNAなどの検出には、ペルオキシダーゼ等で生体分子を標識し電気化学的に検出する手法や酵素反応による発色、蛍光の程度により目的物質を検出する方法が主に用いられている。しかし、これらの手法は生体分子への標識を必要とし、一連の作業に時間を要すると共に生体分子が有する高い認識能の阻害を招くことが問題視されている。この様な現状を打破するため本研究では、ナノ構造の配列・形状と光機能を化学的にデザインし、非標識による高感度な光駆動型バイオセンサの開発を目的とする。 このような目的の下、今年度の研究では、金属ナノ粒子を集積固定した基板材料の構築に取り組んだ。チオール分子をバインダーとして用い、直径数マイクロメートルの球状樹脂ビーズへの金もしくは銀ナノ粒子固定化法の確立を行った。センサ応用において高い再現性を得るためには、光学特性にばらつきのない金属ナノ粒子固定化ビーズの作製が必須である。そこでナノ粒子を固定化する際のチオール添加量を最適化することでビーズ上へ金属ナノ粒子を高密度かつ均一に固定することに成功した。計測光学系の適切なセットアップを行い、作製した粒子固定化ビーズの観察および光計測を実施したところ、ナノ粒子を固定した単一のビーズから強い散乱光が観察された。この光の散乱は金属ナノ粒子がビーズ表面に高密度固定されることで引き起こされたものと考えられる。さらに、単一ビーズの散乱スペクトル測定を行ったところ、理論計算により得られたスペクトルと良い一致を示すことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に挙げる項目の達成により次年度以降の研究を無理なく推進することができると考えられるため、本研究はおおむね順調に進展していると言える。(1)金,銀ナノ粒子固定化ビーズの安定した作製条件を確立し、また単一粒子固定化ビーズの散乱光検出およびスペクトル計測を実現することのできる顕微鏡観察環境を構築することができた。(2)理論グループとの議論のもと、スペクトル解析における基本的な手法開発に着手し、実験結果と整合性の良い結果を得ることができた。さらに、検出目的物質の結合によるスペクトル変化のシミュレーションを行うことが可能になった。
|
今後の研究の推進方策 |
金属ナノ粒子固定化ビーズの分析化学的応用展開を試みる。検出目的物質としては抗原、DNAなどを想定している。これらを検出するためにはまず検出目的物質を捕捉するためのプローブをビーズ上に固定する必要がある。実験グループではこれまでに、チオール化DNAの金ナノ粒子への固定化法のノウハウを蓄積している。本技術を金属ナノ粒子固定化ビーズへも適応することでプローブDNA固定を試みる予定である。さらに、プローブ固定したビーズへ検出目的物質を添加し、添加前後のスペクトル変化を追跡することでセンシングへの適応を試みる。一方、ビーズ上に修飾するプローブの濃度、修飾時間および温度を変化させて検出目的物質に対する応答を時間、感度、精度などセンシング特性の観点から評価する。また、得られたスペクトル結果を理論グループが構築したプログラムにより光物性理論的観点から解析することで現象の追跡を行う。理論グループは得られた知見を実験グループへフィードバックし、それを基に実験グループは実験系の見直しを行い、高効率な光検出システムの構築を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度はバイオ関連物質へのセンサ適合性の調査に入る予定である。そのため、研究費は主に実験に必要なDNA,抗体,抗原などの検体購入にあてる。また、新しい実験・理論手法を得るための書籍購入や計算補助ソフト購入も計画している。これらの他、成果発表および情報収集のための国内外旅費も計上する。なお、研究計画を遂行するための基本的な実験設備は整ったため、次年度は高額な設備備品の購入は控える予定にしている。使用計画の内訳は以下の通りである。物品費:400,000円,旅費:350,000円,その他:50,000円
|