研究課題/領域番号 |
23655074
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
川崎 英也 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50322285)
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研究分担者 |
荒川 隆一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (00127177)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | LSPRセンサー / 質量分析 / SALDI-MS / 低分子化合物 / 銀ナノプレート |
研究概要 |
本研究の目的は、分子標的創薬や個別化医療の実現に貢献する「標的タンパク質と複数の低分子薬物の特異的な結合様式を解明」するための質量分析と分光分析を連携させた新規な分析システムを開発することである。これを実現するために、1)局在表面プラズモン(LSPR)センサー(相互作用解析)と2)表面支援レーザー脱離イオン化法質量分析(SALDI-MS)(結合物の同定と構造解析)の両方で使用でき、かつ高感度化できる銀ナノ構造体バイオチップを新規に創製し、このバイオチップを用いたLSPR/SALDI-MS連携システムを開発する。本年度は,LSPRとSALDI-MSの両方で使用できる金属ナノ構造体チップとして,光還元法により三角形状の銀ナノプレートを液中合成した。この銀ナノプレートの特徴は,LSPRセンサーの感度上昇が期待される三角形状を有していること,そして近赤外域にLSPR吸収を示すことである。センサーチップをとして銀ナノプレートを使用するために,カチオン性高分子を用いて銀ナノプレートのガラス基板上への固定化を行い,LSPRセンサーとしての評価を行った。その結果,銀ナノプレート固定化基板は,球状の銀ナノ粒子と比べてLSPRセンサーとして高い感度を示すことを見出した。更に,SALDI-MSの基板しても利用できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、分子標的創薬や個別化医療の実現に貢献する「標的タンパク質と複数の低分子薬物の特異的な結合様式を解明」するための質量分析と分光分析を連携させた新規な分析システムを開発する。これを実現するために、H23年度は,1)局在表面プラズモン(LSPR)センサー(相互作用解析)と2)表面支援レーザー脱離イオン化法質量分析(SALDI-MS)(結合物の同定と構造解析)の両方で使用でき、かつ高感度化できる銀ナノ構造体(銀ナノプレート)バイオチップを新規に創製した。 当初計画予定になかったが,上記の銀ナノ構造体バイオチップが表面増強ラマン分光(SERS)にも有効であることを見出した。今後,LSPRとSALDI-MSの連携だけでなく,SERSとSALDI-MSとの連携分析システムの可能性も示唆された。 これまでの成果は,申請時に予定していた標的タンパク質と複数の低分子薬物の特異的な結合様式を解明するために不可欠な銀ナノ構造体バイオチップの作成に該当する部分であり,おおむね研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度,LSPRセンサーとSALDI-MSの両方で使用できる銀ナノ構造体(銀ナノプレート)チップを新規に作成した。最終年度に当たるH24年度は,銀ナノ構造体バイオチップを用いたLSPR/SALDI連携システムの有用性を検証する。銀ナノ構造体バイオチップへのタンパク質の固定化を行い,このタンパク質を固定化した銀ナノ構造体バイオチップがLSPRセンサーとSALDI-MSの両方において有効であるかを検証する。 最終的に,タンパク質を固定化した銀ナノ構造体バイオチップを用いて,「標的タンパク質と複数の低分子薬物の特異的な結合様式を解明」するための質量分析と分光分析を連携させた新規な分析システムを実現する。 また,銀ナノ構造体バイオチップが表面増強ラマン分光(SERS)にも有効であることを見出した事実を踏まえて,分光分析として,LSPRセンサーよりも感度増大が期待されるSERSとSALDI-MSを連携させた分析システムも検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は,銀ナノ構造体チップを用いたLSPR/SALDI連携システムの有用性の検証する。 銀ナノ構造体チップへのタンパク質固定化を行い,HSA(ヒト血清アルブミン)とワルファリンの結合を評価モデル系とし,このタンパク質を固定化した銀ナノ構造体バイオチップがLSPRセンサーとSALDI-MSの両方において有効であるかを検証する。最終的に,このタンパク質を固定化した銀ナノ構造体バイオチップを用いて,「標的タンパク質と複数の低分子薬物の特異的な結合様式を解明」するための質量分析と分光分析を連携させた新規な分析システムを実現する。 また,銀ナノ構造体バイオチップが表面増強ラマン分光(SERS)にも有効であることを見出した事実を踏まえて,分光分析として,LSPRセンサーよりも感度増大が期待されるSERSとSALDI-MSを連携させた分析システムも検討する。SALDI-MSでは困難な定量測定がSERSでは可能であることから,SERSとSALDI-MSを連携させた分析システムにおいては,高感度検出のみならず,定量分析の可能性も検討する。 当該研究費については,当初導入を予定していたLSPRセンサー用の反射型の紫外可視分光装置を購入しなかったため,次年度繰越金として400,327円が生じた。これは,LSPRセンサーに加えて,ラマン分光法(SERS)の導入がセンサーの高感度化に有効であることを新たに見出したため,次年度に,SERSに必要なUSB顕微鏡の購入を考えたからである。なお,反射型の紫外可視分光装置を購入せずとも,現有装置の透過型の紫外可視分光装置で研究遂行が可能であったため,研究計画の遂行に支障はない。次年度は,LSPRセンサーに加えて,SERSとSALDI-MSを連携させた新たな分析システムも完成させる予定である。
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