本研究の目的は、分子標的創薬や個別化医療の実現に貢献する「標的タンパク質と複数の低分子薬物の特異的な結合様式を解明」するための質量分析と分光分析を連携させた新規な分析システムを開発することである。これを実現するために、1)局在表面プラズモン(LSPR)センサー(相互作用解析)と2)表面支援レーザー脱離イオン化法質量分析(SALDI-MS)(結合物の同定と構造解析)の両方で使用でき、かつ高感度化できる銀ナノ構造体バイオチップを新規に創製し、このバイオチップを用いたLSPR/SALDI-MS連携システムを開発を目指した。その結果,研究期間内に以下の成果を得た。 1)LSPRとSALDI-MSの両方で使用でき、かつ高感度化できる三角銀ナノプレートをガラス基板上に集積したバイオチップ(銀ナノプートチップ)を作成した。2)銀ナノプレートチップを薬物相互作用のあるヒト血清アルブミン,あるいは酵素タンパク質であるトリプシンで表面修飾することができた。3)上記1,2)の銀ナノプレートチップを設置したフロー系でのLSPR分光システムを構築した。4)銀ナノプレートチップを用いることで、タンパク質に結合した低分子化合物のLSPRによる検出と、SALDI-MSにより結合分子の同定を行うことができた。また,銀ナノプレートチップのタンパク質修飾によるLSPR感度への影響について,タンパク質分子量とLSPR感度との関係を明らかにした。 LSPR/SALDI-MS連携システムに加えて,薬物相互作用とタンパク質との相互作用を調べるための方法として,タンパク質修飾磁性ナノ粒子を新規に合成し,タンパク質と薬物との相互作用をSALDI-MSで分析する手法を開発した。
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