研究課題/領域番号 |
23655076
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松田 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 生産計測技術研究センター, 研究員 (10344219)
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研究分担者 |
大庭 英樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 生産計測技術研究センター, 研究員 (60356657)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 低電圧パルス放電 / 大腸菌 / 酵素 / 発色酵素基質法 / 吸収スペクトル / 細胞膜破壊 |
研究概要 |
細菌類検査では内包されている酵素の化学反応による基質の色変化を利用する検査キットが用いられている。細胞膜から酵素機能を損なわずに取り出すため、超音波照射や界面活性剤等の薬品が用いられるが、酵素機能を失う可能性がある。我々が開発した低電圧パルスを用いて細胞膜を破壊する前処理方法では菌類や細胞内に含まれる酵素の内容物をそれらの機能を損なわずに高効率に細胞外に取り出すことが可能である。平成23年度は本装置の基礎検討として大腸菌に含まれる酵素であるベーター-D-グルクロニダーゼの活性を利用し5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ベーター-D-グルクロニド(X-gluc)の発色を観察する発色酵素基質法を利用しその吸光度変化からこの前処理方法の有効性を検討した。菌株として大腸菌を用い、LB液体培地で37℃、12時間以上振とう培養し、遠心分離 (2000rpm, 15min)を行い培養時のLB液体培地を新たなLB液体培地に交換し、培養液用比色計により試料溶液とした(約108 cfu/mL)。コンデンサ容量3mF、ファンクションジェネレータ、直流電源を用いて、低電圧パルス電源を構成した。コンデンサに対する充放電が信号発生器による所定のスイッチング操作で制御され電気エネルギが供給される。放電電極はタングステン製で、針電極をカソード及び平板電極をアノードとし、電極間は2 mmに固定した。試料溶液をセルに1mL分注し、平板電極下に設置したスターラーで攪拌しつつ、5V、5Hz、1,000回のパルスを印加し、37℃で保存し20時間後に吸収スペクトル測定を行ったところ、パルス処理を行っていない試料に比べて大きな吸光度の増加が観察され、本前処理方法の有効性が示された。一方、10V以上の電圧を印加すると呈色反応が認められず、パル印加により酵素活性が失活させられていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)3~5Vと言った低電圧パルス印加により大腸菌内に含まれるβ-D-グルクロニダーゼが機能を保ったまま抽出できることが確認できた。(2)SOWG分光法を用いると通常の透過法よりも基質が低濃度、つまり短時間であっても検出可能なことが観察できた。(3)10V以上の電圧パルスを印加するとβ-D-グルクロニダーセの機能が消失することが分かった。(4)他の検査方法へも応用可能なことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌からの酵素抽出に関して実験条件の最適化を進める。また、超音波照射等の他の前処理方法に比べた長所を明確にするため、これらの方法との比較検討を行う。更にその他の検査方法等への応用も積極的に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬が高価なため、消耗品購入に充てたい。また成果発表のため海外を含めて学会発表を積極的に行い、その旅費や参加費に充てる。
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