研究課題/領域番号 |
23655077
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50217428)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 不斉合成 / 触媒 / 有機分子触媒 / 金属錯体 / 分子変換 / 環境調和 / 水素結合 / 分子認識 |
研究概要 |
環境への負荷軽減を目的とした有機変換反応の高効率化と高選択性を実現する上で、機能性を高めた新規触媒の設計開発は益々重要となってきている。この解決を図るアプローチとして、有機分子触媒による不斉合成反応が挙げられる。有機分子触媒は、(i)取り扱いが容易、(ii)回収再使用が可能、(iii)温和な反応条件、などといった多くの利点から、2000年前後から急速に発展してきた研究分野である。しかしながら、有機分子触媒の適用範囲は、これまでの有機合成化学で確立された変換反応の域を出るものではなく、多くは従来法に代わる環境調和型分子変換といった価値観から開発研究が進められてきた。一方、遷移金属錯体を触媒とする分子変換は、多段階の変換反応を一挙に短縮する、あるいは新たな結合形成を可能にすることで、現在の有機合成化学の発展に大きく貢献してきた。本研究は、申請者が開発したキラルリン酸触媒に、遷移金属錯体触媒の得意とする化学結合の触媒的な活性化を組み合わせ、双方の触媒が有する優れた機能を融合するという斬新な発想のもと、環境への負荷軽減を図る高効率的かつ高選択的な高度分子変換反応を実現することを目的としている。 本研究では、二成分触媒の一つに有機分子触媒、特に申請者らが独自に開発したキラルリン酸触媒を取り上げ、これに遷移金属触媒を組み合わせたリレー触媒系の開発を目指している。このリレー触媒系の構築により二つの触媒系を融合したワンポット触媒反応を開発することが最大の特徴である。本年度は特に金属錯体触媒により不安定活性中間体となるカルボニルイリドの生成、引き続く不斉リン酸触媒による不斉還元によりイソクマリン誘導体の不斉合成を行った。その結果、高いエナンチオ選択性で生成部を得ることに成功し、しかも、不斉金属錯体による不斉の発現はこの反応系ではできず、不斉リン酸触媒の添加が必須であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
有機分子触媒と金属錯体触媒による二成分触媒系の開発では、多種多様な組み合わせが可能である。組み合わせの可能性を探るためには広範な文献調査と多くの実験が必要であるが、震災の影響により、初期スクリーニングを思うように進めることができなかった。その結果、平成23年度は金属錯体触媒によるカルボニルイリドの生成と引き続く不斉リン酸触媒による不斉還元反応の開発のみにとどまってしまった。23年度末より始まった震災からの復旧が順調に進めば、当初の計画通り、金属錯体触媒ならびに不斉リン酸触媒、双方の特徴を最大限に生かしたワンポットリレー触媒系の開発を進めることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
有機分子触媒と金属錯体触媒による二成分触媒系の組み合わせの可能性を探ることを最優先に、金属ヒドリド錯体を用いた炭素炭素二重結合の異性化などを起点としたリレー触媒系の開発研究をさらに推し進める。また、金属錯体触媒による環化を起点とした変換反応は活性中間体を生じる魅力的な反応系である。この金属錯体触媒による環化反応と不斉リン酸触媒を組み合わせたリレー触媒系の開発研究を新たに展開したいと考えている。平成23年度十分に検討することができなかった多種多様な組み合わせの探索についても、平成24年度に改めて実施することで、今後の開発研究が当初の計画通りになるまで復旧できるように努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、有機分子触媒/金属錯体触媒による二成分触媒系の開発を検討する。この開発には、有機合成用の試薬、溶媒、測定溶媒などを必要とするため、研究費は主にこれらの消耗品に充てる予定である。
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