二酸化炭素と有機分子との炭素‐炭素結合生成反応は、最も直接的なカルボン酸の合成法である。カルボキシル基と共にケイ素などのヘテロ原子を導入する触媒反応は、迅速な官能基化や骨格構築を可能にする強力なカルボン酸合成法として、その開発が強く望まれる。 今回我々は、触媒的に発生させたシリル銅の炭素‐炭素多重結合に対する付加を利用し、アルキン及びアレンのシラカルボキシル化反応を開発した。アルキンを基質とした場合にはシラカルボキシル化に続いてケイ素‐炭素結合の切断を伴う環化が進行し、不飽和五員環シララクトンが得られた。反応は高い位置及び立体選択性で進行し、1気圧の二酸化炭素雰囲気下で種々の内部アルキンを効率良く変換することができた。一方、アレンを基質とした場合には環化せず、反応は末端の二重結合部分で選択的に進行し、アリルシラン構造を有する多置換-不飽和カルボン酸を与えた。これらの反応の生成物はそれぞれ、多様な分子変換が可能なビニルシラン及びアリルシラン構造を有するため、非常に有用と考えられる。例えばシララクトンが有するビニルシラン部位は檜山カップリングにより変換でき、対応する多置換-不飽和カルボン酸を高収率で与えた。
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