研究課題/領域番号 |
23655086
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
友岡 克彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (70207629)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アミノ酸 / ペプチド / 面不斉 / ケイ素不斉 / 不斉合成 / 立体化学挙動 |
研究概要 |
本年度は動的面不斉を有する非天然型キラルアミノ酸を設計し,それらの不斉合成を行った.また,得られた非天然型キラルアミノ酸を部分構造として組み込んだペプチド類の合成とその立体化学挙動解析を行った.○動的面不斉を有するアミノ酸の合成と立体化学挙動の解明 先に我々がその合成に成功しているC3位にヨウ素が置換した面不斉中員環アミンに対してα-ブロモ酢酸エステル由来の有機亜鉛反応剤との根岸カップリングを行い,引き続き,脱保護処理することで面不斉を有する新規γ―アミノ酸を合成する事に成功した.また,得られたγ―アミノ酸が室温において立体化学的に安定であることを,一方,高温下ではゆっくりとラセミ化することを明らかにした.○動的面不斉を有するペプチドの合成 上述の面不斉アミノ酸と天然アミノ酸を組み合わせた新規ジペプチドの合成に成功した.具体的には,ラセミ体の面不斉アミノ酸とグリシンとの縮合,もしくは光学活性バリンとの縮合で対応するジペプチドをそれぞれエナンチオマー混合物,もしくはジアステレオマー混合物として合成した.この様にして得られたジペプチドはいずれも,室温において立体化学的に安定であることを,一方,高温下ではゆっくりとラセミ化もしくはエピメリ化することを明らかにした.すなわち,当初期待していたような動的面不斉を有する面不斉ジペプチドを得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的の一つである動的面不斉を有するアミノ酸の研究に関して,面不斉γ―アミノ酸の合成とそれを天然アミノ酸と組み合わせたジペプチドの合成に成功した.またそれらの基礎的な立体化学挙動を解明した.この進捗状況は当初の予定を満足するものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
動的面不斉を有するアミノ酸の研究に関しては,今後,面不斉γ―アミノ酸を構成要素とする多様なペプチド類の合成とそれらの立体化学挙動の解析を進めていく計画である.一方,ケイ素不斉を有するアミノ酸の研究に関しては,既にその合成に成功しているキラルシラカルボン酸をアミド化することを,また,Si-N結合の形成反応について検討を進める計画である.
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」が生じた理由: 本年度は主として小規模な探索実験を行い,また,その結果が順調であったことから消耗品の使用量が抑えられた.これにより「次年度使用額」が生じた.次年度の研究費の使用計画:次年度においては,本年度の成果をふまえ,面不斉アミノ酸の合成を中大規模で行い,また多様な変換,分析を行う.これに伴い,増加する反応用試薬,溶媒,ガラス器具などの消耗品経費について,当初予定の本年度研究費と昨年度の「次年度使用額」を合わせてこれに充てる予定である.
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