研究課題
キチンを低分子化したキトオリゴ糖のうち、重合度7程度のキトオリゴ糖は植物の生態防御機構におけるエリシター活性を有する物質として注目されている。近年、糖転移活性を持つキチナーゼによるキトオリゴ糖の調製法が研究されているが、6量体以上の効率的な調製法はいまだ確立していない。すでに、我々はキチナーゼの遷移状態アナログ基質である糖オキサゾリン誘導体が、塩化2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリウム(DMC)を用いることにより、一段階で簡便に合成できることを示した。本研究の目的は、DMCを用いてキトオリゴ糖をオキサゾリン化し、キチナーゼ触媒による糖転移反応によって、重合度7のキトオリゴ糖を選択的に合成することにある。キトビオース((GN)2) 、キトペンタオース((GN)5) のオキサゾリン誘導体 (GN)2-oxa、(GN)5-oxa をドナーとして用い、それぞれ (GN)5、(GN)2をアクセプターとする糖転移反応を行った。反応触媒には、基質や糖転移生成物の加水分解を抑えるために部位特異的変異導入を施した変異型キチナーゼW433Aを用いた。その結果、ドナーに(GN)2-oxa、アクセプターに(GN)5を用いた場合、(GN)3や(GN)4といったピークが主に観測され、目的生成物である(GN)7のピークはほとんど見られなかった。これは、本来(GN)2-oxa が入るべきドナーサイトにアクセプターである(GN)5が取り込まれてしまい、糖転移反応よりも加水分解反応が優先した結果であると考え、次に、ドナーに(GN)5-oxa、アクセプターに(GN)2を用いたところ、ほぼ選択的に(GN)7を合成することに成功した。また、本研究を遂行中に、N-アセチルグルコサミンの脱水縮合がα選択的に進行することを見出し、その応用としてピロリ菌抑制作用を有するαで結合したオリゴ糖の合成にも成功した。
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