研究課題/領域番号 |
23655098
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小坂田 耕太郎 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (00152455)
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研究分担者 |
竹内 大介 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (90311662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環化重合 / ジエン / パラジウム触媒 / 立体制御 |
研究概要 |
本研究で用いる触媒の配位子となる非対称のN,N’-ジアリールジイミンを、1,2-ジケトンに異なる2種類のアニリン誘導体を逐次反応させる、段階的なアリール基導入によって合成した。定法によって、上記配位子のパラジウム錯体を合成単離することに成功した。そのC1対称構造は、NMR,X線結晶構造解析などで検討した。X線結晶構造では重合に適する配位構造が認められたが、NMRによる溶液中の構造解析によって、複数のコンフォメーション異性体が生成していることがわかった。実際の触媒活性種の構造決定を検討したが、最終結果を得ていない。上で合成したパラジウム錯体触媒を用い、エステル基、アセタ―ル基、イミド基を有するジエンの環化重合反応を行った。対称ジイミン配位子をもつパラジウム錯体よりも高い反応温度、長い反応時間を必要とする事がわかり、配位子の立体的なかさだかさが、反応に強く影響している事がわかった。 メチル及びエチル置換基をアルキル末端として有するモノマーをそれぞれ合成し、重合反応を行った。分子量、収量などを比較することによって最適条件を定める事ができた。ポリマー生成物の構造を通常のNMR等の分光法とGPCによる分子量決定などにより行った。メチル末端をもつジエンの環化重合体の立体選択性は13C-NMRにより評価し、二連子で90%以上のアイソタクチック選択性を有する高分子を得た。エチル末端をもつジエンの環化重合体の立体選択性をNMRで決定する事はできなかったが、広角X線散乱などの結果をメチル置換ジエンの重合体と比較することによって高い選択性を有することを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルボキシル基、イミド基のような極性官能基とメチルまたはエチル末端を有するモノマーの重合に成功し、かつ高い立体選択性を得た事は、きわめて優れた結果であり、類例を見ない。また、これを類似の単量体に適用することによって、本研究の目的が達成されると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究によって、C1対称パラジウム錯体の合成、これを用いる数種のジエンの環化重合、重合の高い選択性の達成、に成功した。次年度以降は、この錯体触媒、ジエン単量体を新規合成によってさらに多く準備し、その重合を行う。さらに、官能基の分子間相互作用を用いた分子間のネットワークによる高分子ゲルの形成など、分子構造と機能の関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の研究に引き続き、新規C1対称パラジウム錯体を合成し、これを触媒とするジエンの環化異性化重合を行う。重合反応及び重合生成物のキャラクタリぜーションについては、従来の対称パラジウム錯体触媒によるジエン環化重合及び前年度の本研究に基づいて行う。単量体としては、前年度のカルボキシル基、イミド基を有するメチル、エチル末端ジエンに加えてプロピルからデシルまでの広範囲の長さのアルキル基を有する類縁ジエンを新たに合成して反応に用いる。さらに、スルホンアミド窒素を官能基として含む片末端ジエンを合成し、その環化異性化重合を検討する。上記の単量体と触媒を用いることによって、主鎖五員環に酸素または窒素、硫黄官能基を有する高分子を合成し、その立体構造についてNMR等の分光手段と広角X線測定やDSC結果の類似性に基づいて、精密に解析する。それぞれの官能基をもつジエンにおいて、メチル、エチル末端ジエンの重合体でのアイソタクチック選択性が高い触媒と反応条件を得るように最適化を行い、これに基づいてより長いアルキル基を有するジエンの重合を行い、広範囲のアルキル基を含む単量体の重合反応の選択性向上を効率よく行う。極性の高い官能基を含み、かつ単量体のアルキル鎖が長いジエンの重合によって、生成する高分子は、炭化水素鎖に規則的に極性基が分布した、構造の整った構造を有する。これらの極性基同士の分子間相互作用、さらに、ピペラジンなど水素結合アクセプター性分子の添加により、さらに強い相互作用に基づいた高分子ネットワークの形成を試みる。23年度の研究において、薬品等の物品を3月に購入したため、執行時期が遅れた。相当部分については、24年度初頭に予算執行を行う。
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