研究概要 |
ポリ(L-リシン)の塩酸塩とイミダゾール-4-カルボキシアルデヒド(IA)を1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene(DBU)の共存下で反応させることにより、動的共有結合であるイミン結合を介してイミダゾリル基が側鎖に導入されたポリペプチドを合成した。このポリペプチドをp-トリル基、4-ヒドロキシフェニル基、および2-ヒドロキシエトキシフェニル基を有するアルデヒドとともに重水素化メタノールに溶解し、イミン/アルデヒド間の動的組換えを利用した側鎖組換え反応の進行を1H-NMRスペクトルにより追跡したところ、ポリペプチド側鎖からのIAの脱離と、その他のアルデヒドのポリペプチド側鎖への導入が確認された。しかし、IAが30%脱離した段階でポリマーが沈殿してしまい、十分な側鎖組換えを行うことができなかった。 そこで次に、ポリペプチド側鎖に少量(~3%)のポリエチレングリコール(PEG)を導入し溶解性の向上を図ったところ、側鎖組換えにおいて70%以上のIAが脱離してもポリマーの沈殿は生じず、各アルデヒドの導入率が平衡に達するまで側鎖を組換えることが可能となった。また、平衡に達した際の各アルデヒドの導入率は仕込み比から予測される値とは異なっており、側鎖官能基間の相互作用が組換え後の導入率(=各モノマーユニットの組成比)に影響を与えている可能性が示唆された。さらに、組換え反応の進行に伴う高次構造の変化をCDスペクトルにより追跡した結果、反応の進行に伴いCDスペクトルの強度に変化が見られ、側鎖の組換えがポリペプチドの高次構造に影響を及ぼしていることが示された。 組換え後のポリペプチドのイミン結合を還元したのちに変性試験を行ったところ、タンパク質的な変性挙動が確認された。
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