研究課題/領域番号 |
23655103
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大内 誠 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90394874)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高分子合成 / リビング重合 / ラジカル重合 / レドックス / 有機金属錯体 / 分子認識 / 触媒 / 配位子 |
研究概要 |
本研究では,金属触媒によるリビングラジカル重合に対し,モノマーを認識する触媒を設計することで,より高度な重合制御を目指している。平成23年度は,まず計画通りに,配位子に認識サイトを組み込む目的で,カルボン酸モノマーを認識できるグアニジンを有するホスフィン配位子を設計・合成し,ルテニウム錯体に導入して,リビングラジカル重合触媒として用いた。重合制御は可能であったものの,酸モノマーの認識による機能が見いだせなかったので,「配位子による認識」から「中心金属による直接認識(配位)」へ計画をシフトし,カチオン性錯体の設計とその重合制御を検討した。 従来は中性の配位飽和錯体を用いており,配位空きサイトは存在しなかったが,カチオン性にすることで,モノマーが中心金属に弱く配位できるようになった。さらに,中性錯体を用いる場合,生長末端活性化に伴うハロゲン授受のために,配位子脱離を必要としたが,カチオン錯体ではそのプロセスが不要になり,よりスムーズな触媒が進行することを明らかにした。これにより,助触媒を必要としない高活性触媒系を見出した。さらに,カチオン性錯体にフェロセンとフェロセニウムイオンの酸化還元を共存させることで,50ppmという極少量のルテニウム量で分子量10万のポリマーを精度よく合成できる超高活性システムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた配位子によるモノマー認識に基づく触媒設計は困難であったが,中心金属がモノマーを直接認識できるカチオン錯体を新たに開発した意義は大きい。触媒反応は中心金属で起こるため,金属に直接相互作用できると,配位子との組み合わせによって,選択性が発現しやすいと期待される。これにより,本研究で目的としている「低重合性モノマーの重合制御」「立体構造制御」へと展開するためのベース触媒を築けたと考えている。以上から,「おおむね順調に推移している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はカチオン性錯体によるリビングラジカル重合を開発し,「モノマーが弱く配位可能」「配位子脱離が不要」というカチオン性錯体の特徴を明らかにしたので,今後は「低重合性モノマーの重合制御」,「立体構造制御」に向けた触媒システムの構築を目指す。具体的には,対アニオンの設計によるモノマー配位サイトの構築と,キラル配位子の導入である。また,本年度明らかにしたフェロセン添加についてもカチオン性錯体と組み合わせ,触媒サイクルの効率化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
カチオン性ルテニウム触媒の開発に向け,ルテニウム錯体前駆体,カチオン化剤,配位子,ガラス器具などが,得られたポリマーの構造を解析するために,NMR重溶媒や排除体積クロマトグラフィーカラムなどが必要となるので,次年度は研究費をこれら消耗品に使用する計画である。
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