研究課題/領域番号 |
23655105
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
灰野 岳晴 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80253053)
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キーワード | 超分子化学 / 自己修復機能 / ポルフィリン / 分子間相互作用 / ホストゲスト化学 |
研究概要 |
研究目的:本研究計画では,我々がこれまで開発してきた包接モチーフを基盤とした超分子ポリマーを利用して自己修復機能を有する高分子材料の開発を試みる。非共有結合により維持される超分子ポリマーから調製される高分子材料は非共有結合の可逆的性質により切断されても,切断面が結合の再形成により修復される。一方で,可逆的結合は共有結合に比べ非常に弱いため,材料としての物理的強度を得ることが非常に難しく,非共有結合を基盤とした超分子ポリマー材料の開発例は極めて少ない。この二つの矛盾する機能を解決するため,新たな超分子ポリマーを提案しこれらの問題を解決すると共に自己修復機能を有する新規な超分子ポリマー材料を開発する。 超分子ポリマーの高次化により非共有結合を基盤としたネットワーク型超分子ポリマー構造を設計する。超分子ポリマーを形成するモノマーのゲスト包接部位を従来の二カ所から三,四カ所に拡張することで高次空間に広がった超分子ポリマーを構築することができる。この様にして形成されるポリマーは多点分子間相互作用が協同的に働くことで,一次元ポリマーに比べポリマー形成に寄与する結合が大きく安定化される。従って,高次に拡張された超分子ポリマー構造は,安定な自立膜を形成すると期待できる。この様にして大きく拡張された超分子ポリマーはそれぞれの結合が可逆的であるため,いったん結合の切断が起こっても容易に再結合ができるため,自己修復機能を実現できる。 研究実績:現在多点結合部位をもつポリフィリンクレフト分子やビスカリックスアレーンホスト分子の合成をほぼ完了している。ポリマー主鎖を導入したホストやゲスト分子を合成し,ポリマーを基盤とした超分子ポリマーの開発にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画した多点包接部位をもつホスト分子の合成が比較的順調に進行している。また,ポリマーとポリマーの結合部位となる分子認識モチーフの会合定数もすでに決定しており,ポリマーを結合するに十分な強さを有していることがわかった。今年度はコアとなるホスト分子の大量合成と共に自己修復の評価を行えると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後多用な構造をもつホスト分子とゲスト分子の合成を行いそれらの会合による超分子ポリマーの合成を行う。合成した超分子ポリマーの物性を明らかにしつつ,分子構造とポリマーの物性の関係を考察する。自立膜ができる程度の強度を有するポリマー材料へと展開を目的に,ポリマーとのハイブリッド化により実用可能なポリマー材料を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本研究計画を進めるために,多用な有機分子の合成を行う。化学合成には非常に多くの溶媒や分離用シリカゲル,合成試薬が消耗品として必要になるので,消耗品を主な使途として計画する。その他,研究発表のための学会出席旅費,機器使用料,論文投稿料などを主な使途として計画する。
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