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2011 年度 実施状況報告書

局所粘弾性関数の4次元マッピング:高分子物性の階層的不均一描像の提案

研究課題

研究課題/領域番号 23655106
研究機関九州大学

研究代表者

田中 敬二  九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20325509)

研究分担者 春藤 淳臣  九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (40585915)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードソフトマテリアル / 粘弾性関数 / 不均一性 / 光ピンセット
研究概要

紐状ミセル水溶液中に分散させたポリスチレン(PS)粒子に赤外光を照射し、正弦的な変位振幅を与えると、粒子は赤外光の動きに追従する。紐状ミセル水溶液の局所的な貯蔵弾性率 (G′) および損失弾性率 (G″) を評価した。紐状ミセルの局所粘弾特性の平均値は単一の平坦弾性率 (G0) および緩和時間 () を有するMaxwellモデルで記述でき、光ピンセットによる測定から導出したG0およびの平均値はバルク値とよく一致した。この結果は、巨視的な粘弾性はマイクロスケールでの粘弾性の平均として理解できることを示している。興味深いことに、G′およびG″の変動係数(CV)は測定周波数とともに増加した。このことから、紐状ミセル水溶液の局所粘弾特性は観測時間に依存した不均一性を有することが明らかになった。粘弾特性の不均一性と紐状ミセルの絡み合いとの相関を検討するため、塩濃度依存性を評価した。CV値は塩濃度とともに増加した。これまでに、塩濃度が高いほど紐状ミセルのアスペクト比が高くなることが報告されている。一般に、高いアスペクト比を有する紐状ミセルは、効率よく絡み合い、三次元網目構造を形成する。したがって、紐状ミセル水溶液において観測された粘弾特性の不均一性は、不均一な網目構造に強く関係することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度は当初の計画に従って研究を実施し、実施項目(1)光ピンセットのセットアップ、および(2)粘弾性関数の評価を行った。とくに、ソフトマテリアルにおける粘弾特性の空間的不均一性を明らかにすることに成功した。研究成果の一部は、学術論文ならびに学会にて発表済みである。以上の理由により、研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

平成23年度は、光ピンセットを用いた局所粘弾性関数の評価方法を確立し、また、ソフトマテリアルにおける粘弾特性の空間的不均一性を明らかにした。平成24年度は、その不均一性の起源について検討するとともに、下記の項目を実施する予定である。(1)粘弾性関数の4次元マッピング、(2)時間、プローブサイズおよび温度依存性の検討、(3)固体状態における不均一性との比較・検討。上記の実施項目を通じて、高分子材料中の階層的不均一性に関する描像を明らかにしていく予定である。

次年度の研究費の使用計画

本研究では、高分子材料の物性に様々な空間スケールの不均一性があり、これらは互いに相関があるという独自の考えを提案する。高分子の固化プロセス(ここでは重合)において、メゾスケールレベルの物性不均一性が現れ、複雑な過程を経て凍結されると予想する。ここでの空間スケールは分子鎖の広がりよりはるかに大きいところまで及ぶことに特徴がある。構造材料やデバイス作製において高分子の固化プロセスは重要であり、本研究で提案する概念は学術的にはもちろん、工業的にも有益である。また、物性の階層的不均一性が高分子材料に特徴的な現象かを明らかにすることも興味の対象であり、凝縮系材料全体へのインパクトも大きいと期待する。H24年度は1)粘弾性関数の4次元マッピング:アクリル酸(AA)の塊状重合を行う。粘弾性関数の空間分布はポリスチレン(PS)微粒子をマニピュレートして移動しながら測定する。また、レーザーの焦点距離をz軸方向に移動させることで深さ方向の情報を得る。これらの測定を時間の関数として行うことで、貯蔵弾性率(G')および損失弾性率(G")の4次元マッピングを行う。2)時間、プローブサイズおよび温度依存性の検討:上述の時間依存性は、重合を進行させながら、および止めた状態で検討する。両者ともに不均一性の発展に関する情報を与える。また、PS微粒子のサイズを変えることでプローブサイズを変え、G'およびG"の4次元マッピングを行い、異なる長さスケールの不均一性を可視化する。更には、固化プロセスの速度を変えることを目的とし、上述の実験の温度依存性を検討する。3)固体状態における不均一性との比較検討:高分子の固化プロセスで発現する物性の階層的不均一性とPAAの階層的分子運動性、また、PAA固体中での可視波長スケールの密度揺らぎとを比較・検討する。以上に基づき、高分子材料中の階層的不均一性に関する描像を明確にする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Spatial heterogeneity in a lyotropic liquid crystal with hexagonal2012

    • 著者名/発表者名
      Keiji Tanaka et al
    • 雑誌名

      Physical Chemistry Chemical Physics

      巻: 14 ページ: 5247-5250

    • DOI

      10.1039/c2cp40284j

    • 査読あり
  • [学会発表] Thickness Dependence of Methanol Case II Diffusion in Thin Poly(methyl methacrylate) Films Studied by Optical Reflectivity2011

    • 著者名/発表者名
      Keiji Tanaka
    • 学会等名
      The 12th Pacific Polymer Conference(招待講演)
    • 発表場所
      Jeju(Korea)
    • 年月日
      2011.11.15
  • [学会発表] Polymer Conformation at Inorganic Interface2011

    • 著者名/発表者名
      Keiji Tanaka
    • 学会等名
      HyMap2011(招待講演)
    • 発表場所
      Pusan(Korea)
    • 年月日
      2011.10.28

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公開日: 2013-07-10  

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