高分子材料に特性長さの異なる不均一性が存在し、それらは互いに相関があると考えれば、高分子物性の理解と制御に新たなアプローチが提案できる。本研究では、光ピンセットを用いて高分子固化プロセスの局所領域における静的および動的粘弾特性を座標および時間の関数として4次元マッピングを行い、高分子材料物性の不均一性を可視化することを目的とした。 H23年度は、光ピンセット装置を新たにセットアップし、ソフトマテリアルの局所粘弾性解析法を確立した。また、本手法を用いて、超分子ヒドロゲル、リオトロピック液晶の局所粘弾性を評価した。その結果、それらの粘弾特性は空間的に不均一であることを明らかにした。また、プローブ粒子のサイズを変えることによって、不均一性の空間スケールはマイクロスケールであることを明らかにした。 H24年度は、レーザーの振動周波数および温度を制御するため、光ピンセット装置をさらに改良した。紐状ミセル水溶液における空間不均一性を評価した結果、不均一性の程度が測定周波数に依存することを明らかにした。また、超分子ポリマー水溶液のゾルーゲル転移過程(固化プロセス)における不均一性についても検討し、ゲルへの転移過程はマイクロスケールにおける物性、ひいては集合構造の均一化を伴って進行することを明らかにした。 このような不均一性は、限られた測定手法のためにこれまで議論されておらず、高分子材料に限らず様々な材料の階層的ダイナミクスの理解と制御に対する新たな指針といえる。
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