研究課題
強相関電子系を形成する単結晶内に超分子ローター構造を構築し、ブラウンラチェット機構による一方向回転の実現、およびエネルギー変換のための基礎物性評価を行うことを目標とし、以下の項目について順次検討を行う。1,2を期間内に達成することを目指すとともに、3,4の可能性を評価する。1. 超分子ローター構造のパーツとしてキラルなクラウンエーテル等を用いることで、ノコギリ歯型ポテンシャルを導入する。(必要条件1)2. 置換アニリニウム等、ダイポールをもつ回転子を導入し、外部電場により分子回転を摂動できる仕組みを用意する。(必要条件2)3. 光学測定や熱力学測定を駆使して、一方向回転を検証する。4. 分子回転に伴う磁性・電気伝導性の異常を評価し、それを端緒としてエネルギー変換素子構築への道筋を示す。24年度までに、非対称ポテンシャルの導入およびダイポールを持つ回転子の導入を中心に検討を進めた。具体的には4つのキラルセンターを持っているdicyclohexano[18]crown-6のmeso体を用いて結晶内で歪ませることによりキラルな空間群を得ることを目指した。trans-syn-trans型のdicyclohexano[18]crown-6誘導体を新たに合成し、また、ダイポールを持つ回転子として、m-fluoroaniliniumを選び、結晶作製を行った。得られた結晶は、racemic twinであり、項目1を満足する可能性が高い。また、磁性との相関も示唆され、項目4についても足がかりが得られている。
2: おおむね順調に進展している
4つの研究項目のうち、すでに項目1をほぼ達成している。また、これまでの研究から、現在用いている結晶は項目2を満ぞすする物と考えられる。また、磁性との相関も示唆され、項目4達成できる可能性が高い。
24年度に引き続き得られた結晶の構造物性を評価する。racemic twin結晶の温度変化に伴う相転移と結晶構造の相関を検討する。結晶の極性変化をSHG測定等で追跡することで、キラルな構造が保たれることを確かめる。さらに、項目1の実現を確実にするために、キラルなdicyclohexano[18]crown-6であるtrans-anti-trans型の誘導体を合成し、結晶作製を進める。また、項目2を検証するため、既に得られている結晶の誘電率を測定し、外部電場により分子回転を摂動できる仕組みが整っていることを検証する。項目3についてその可能性を示すため、結晶の比熱等を詳細に検討する。また、項目4の可能性を示すため、高磁場下での誘電率測定に挑戦する。
平成24年度未使用額については、平成24年度中に納品し、支払いが次年度になった消耗品の支払いに使用する。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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