研究課題
生物においては、『確率共鳴現象(stochastic resonance)』に基づいた熱揺動を利用し、高効率エネルギー変換を実現している。この原理に基づく人工分子モーターを結晶系で実現することは、今後、高効率エネルギー変換系などの開拓へ向けての大きなステップとなりうる。熱揺動を利用した一方向回転実現には、ブラウン-ラチェット機構の利用が現実的である。そのためには1)非対称(ノコギリ歯型)回転ポテンシャルおよび2)その摂動機構を構築する必要がある。2)については、分子が持つダイポールに対し、外部からの電場印加により実現可能であると考えられる。そこで、本研究では、ブラウン-ラチェット機構による一方向回転を実現し、さらに将来的エネルギー変換素子となる人工分子モーター構築を目指して、まずは第一段階の必要条件である非対称ポテンシャルの実現に向けて検討を行った。具体的には、キラルなクラウンエーテルを導入することで、のこぎり型ポテンシャルの実現を図るとともに、それに伴う新奇物性の探索を行った。dicyclohexano[18]crown-6誘導体として、新たにtrans-syn-transおよびtrans-anti-trans誘導体の合成を行った。trans-syn-trans誘導体は結晶内で比較的フラットな構造をとり、回転ポテンシャルに対する摂動は比較的小さいものと予想される。一方、trans-anti-transラセミ体結晶においては、クラウンエーテルのコンフォメーションは、カチオンを包み込む形をしており、のこぎり型ポテンシャル形成に有効な構造を採っていることが分かった。また、回転子として4-aminopyridineのモノプロトン化物を用いた場合には、誘電応答のヒステリシス挙動が観測された。
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