研究課題/領域番号 |
23655111
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
深港 豪 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80380583)
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研究分担者 |
玉置 信之 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00344218)
亀井 敬 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90450650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 微小管 / 重合阻害剤 / アゾベンゼン |
研究概要 |
本研究は、フォトクロミック分子の一つであるアゾベンゼンの光異性化反応で、微小管タンパク質の重合・脱重合ダイナミクスを光可逆的にコントロールできるアゾベンゼンを開発し、それを利用した擬似細胞マシンを創製することを目的としている。 本年度は、置換基の種類や置換位置の異なる種々のアゾベンゼン誘導体を合成し、微小管との相互作用や重合阻害作用に及ぼす置換基の種類や結合位置の影響を徹底的に検討することを目指して研究を進めた。その結果、分子内に微小管に相互作用できる親水性のアミノ酸と、ある程度の長さの疎水性のアルキル鎖をパラ位に有することが脱重合の誘起には必要であり、両親媒性の構造が微小管の脱重合に大きく寄与していることを明らかとした。また、アゾベンゼン骨格の光異性化反応に伴い分子の形が大きく変化することが、脱重合-重合挙動の光スイッチングを可能にしていることが示唆された。これにより微小管の脱重合ダイナミクスを光スイッチングするために必要な分子設計指針を明らかとすることができた。 この結果を応用して、可視光のみで機能する光スイッチング能を有する微小管重合阻害剤の開発にも取り組んだ。生細胞系にこの研究を発展させていく上では、紫外光照射による光異性化反応は大きな弊害となってくるため、より長波長の可視光で光異性化反応を行えることは必要不可欠となる。アゾベンゼンのオルト位に4つアルコキシ基を導入したアゾベンゼン骨格の両側にリジン基とヘキシル基を有する分子を合成し、可視光のみで機能する光スイッチング機能を有する微小管重合阻害剤を開発することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに置換基の種類や置換位置の異なる種々のアゾベンゼン誘導体を合成し、分子内に微小管に相互作用できる親水性のアミノ酸と、ある程度の長さの疎水性のアルキル鎖をパラ位に有することが脱重合の誘起には必要であり、両親媒性の構造が微小管の脱重合に大きく寄与していることを明らかとしている。さらに、その結果を応用することで可視光のみで機能する光スイッチング能を有する微小管重合阻害剤の開発にも成功している。この結果は当初予定していた研究計画よりも幾分か早く研究が進行していることから、達成度としてはおおむね順調であるものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本年度に得られた結果をもとに、まずは重合阻害作用を示す異性体を逆転させた(すなわちトランス体では重合阻害作用を示さず、シス体で重合阻害作用を示す)分子の開発に取り組む。その後、光スイッチング機能を有する微小管上号阻害剤として最適構造を持つアゾベンゼン誘導体をスクシイミドエステル化もしくはマレイミド化し、チューブリンのアミノ残基やシステイン残基に共有結合させる方法を検討することで、微小管ダイナミクスを光制御可能な分子を微小管の基本単位となるチューブリンに直接組み込んだ光応答性チューブリンの開発を試みる。生化学的あるいは分光学的手法を用いて、反応させたチューブリンに対するアゾベンゼン誘導体の修飾率と重合能を評価し、最適条件を明らかとする。最終的には、それらを人工脂質膜等の微小空間に閉じ込め、光照射することでその形態を変化させる人工マイクロマシンを作ることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度末に発注した実験器具および試薬類が年度内に納品は完了したものの、年度内の手続き処理に間に合わずに未使用額が発生した。この平成23年度未使用額については、既に納品が完了し、支払が次年度になった実験器具および試薬類の支払に使用する。
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