生体高分子の一つであるポリペプチドは、水素結合などの非共有結合を介して多様な高次構造を形成することにより、分子認識や分子変換反応、分子・イオン配列などを実現する優れた機能性分子である。本研究では、これら従来ペプチドの構造多様性、機能性を飛躍的に向上させる新規なペプチド型機能性分子モチーフを創製することを目指し、水素結合に代えて多点金属配位によって高次構造へとフォールディングする「メタロペプチドフォルダマー」を構築することを目標とした。 上記目的に沿って研究を進め、平成24年度までに得られた研究成果を国際学術誌 "Angewandte Chemie International Edition" にて発表した。具体的には、高い金属配位能を有する人工ペプチドとして、オキシムペプチドを新たに設計・合成し、様々なオリゴペプチドについて金属錯体形成を検討した。その結果、例えばパラジウムイオンとの錯体形成に伴って、ペプチド鎖が様々な二次構造へとフォールディングすることを単結晶X線構造解析を含む各種分析法によって明らかにした。さらに、より長いテトラペプチド鎖にも適用したところ、2つの金属イオンと同時に錯体形成することにより、二核パラジウム錯体型フォールディング構造を一義的に構築できることを見出した。加えて、金属錯体に特徴的な配位子交換反応を活用することにより、得られたフォールディング構造が酸-塩基の添加によって可逆的に構造変換することも明らかにした。 上述した平成24年度までの結果を受けて、平成25年度では異なる金属イオンからなる異種多核錯体型メタロペプチドフォルダマーを構築することを目指した。その結果、パラジウムとロジウムイオンが選択的に配列した異種二核および三核錯体を合成できることを見出した。また25年度は、24年度までの結果を総説の一部としてChemistry Letters誌に発表した。
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