研究課題/領域番号 |
23655127
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 類 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (60207256)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | メタルフリー磁性キャリアー / メタルフリー磁性粒子 / 磁性ミセル / 磁性エマルション / 磁性ゲル / 両親媒性ラジカル化合物 / MRI造影剤 / 磁性ソフトマテリアル |
研究概要 |
これまで、磁性ソフトマテリアルの磁性ソースとして、鉄や酸化鉄のナノ粒子が用いられてきたが、生体内磁性プローブとして利用された場合の安全性については、十分な理解が得られていない。一方、有機ニトロキシドラジカルの生体にたいする安全性は十分に検討されており、磁性ソースとして有機ニトロキシドラジカルを含むメタルフリーな磁性ソフトマテリアルが開発されるならば、それらの人体への応用も十分視野に入れることができると考えられる。 そこで、本研究ではドラッグデリバリー用のメタルフリー磁性キャリアーやMRI造影剤用のメタルフリー磁性粒子の開発を目指して、界面活性剤を示す両親媒性の有機ニトロキシドラジカル物質の合成とそれらを用いる磁性ミセルやエマルジョンの調製を検討した。 その結果、2種類の新規キラル磁性ソフトマテリアルの合成に成功した。まず、アンモニウムを親水性基とするキラル両親媒性ニトロキシドラジカル化合物を合成し、これが水中でミセルやエマルションを形成することを確認した。特に、中性の油性ニトロキシドラジカルを内包したマイクロエマルション(粒径0.1ミクロン)が、弱い永久磁石に引きつけられて水中を自由に動くことをはじめて明らかにした。この結果は、低磁場誘導型のメタルフリー磁性キャリアーとして利用できることを示している。 次に、アミノ酸残基を親水性基とするキラル有機ニトロキシドラジカル化合物を合成し、これがヒドロゲルを形成することを明らかにした。興味深いことに、この磁性ヒドロゲルをキャピラリーに封入して水に浮かべ、弱い永久磁石を近づけたところ、キャピラリーが水面上を自由に動くことを確認した。また、これらの両親媒性物質の臨界会合濃度や相転移挙動を電子スピン共鳴法により決定、追跡できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画は盛り沢山であったため、すべてとはいかなかったが、鍵となる2種類の新規両親媒性ラジカル化合物の合成とそれらの磁性ミセル・エマルション・ゲルの調製に成功しており、ほぼ期待どおりの結果を残せた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究計画がある程度期待通りに進展し、平成24年度以降に進むべき方向性と具体性が明確になったので、これに従って研究を継続する。同時に、当初の研究計画調書に記載した新規両親媒性化合物の合成にも取り組む所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費90万円については、薬品類や論文別刷購入などの消耗品費として60万円、研究成果発表のための旅費として30万円を予定している。
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