平成25年度は、これまでに得られた基礎的な知見や新規知見をもとに、ケイ酸タングステンの結晶構造(具体的には含水率)の制御に取り組み、生成グルコース収率との関係を調べた。 マイクロ波によるセルロースの直接糖化においてケイ酸タングステンを用いた場合、溶媒に1-プロパノールや2-プロパノールを用いるとグルコースが生成しないことがわかった。また、溶媒にエタノールを用いるとグルコースが生成するものの糖化効率は低いことがわかった。ただし、水とエタノールの混合溶媒を用いることによって、グルコース収率が高くなることがわかった。 ケイ酸タングステンに120℃、24時間乾燥処理とマイクロ波照射乾燥処理を行いセルロースの糖化に用いると、グルコース収率が高くなる結果を与えた。これらの結果から、マイクロ波照射によるセルロースの直接糖化はケイ酸タングステン中の結晶水の含量や状態に大きく依存することを見出し、条件を最適化できれば、極めて高いグルコース収率が得られることがわかった。また、ケイ酸タングステン以外のヘテロポリ酸を用いた場合もマイクロ波照射によってセルロースを分解しグルコースを生成することがわかった。二糖、三糖をマイクロ波分解した結果、高い収率でグルコースが生成した。この結果から、セルロースの分解においても選択的加水分解が起こっている可能性が高いことが示唆された。 ケイ酸タングステンの加熱処理およびマイクロ波処理により、ヘテロポリ酸構造を支えている結晶水の重要性が示唆された。また、ドライアップの瞬間に加水分解反応が起こることから、ケイ酸タングステンの内部に存在する結晶水が利用されている可能性が考えられる。加水分解に必要な水は、ケイ酸タングステン分子内に存在する水分子で十分な量を確保できる。よって、溶媒としての水はセルロースとケイ酸タングステンを接触させる役割を果たしていると考えられる。
|