研究課題/領域番号 |
23655133
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
手木 芳男 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00180068)
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キーワード | 時間分解ESR / 高感度化 / 分子デバイス測定 |
研究概要 |
ESRは、時間分解能が他の分光法に比べて低いが、電子状態の詳細な情報を得ることができ、分子エレクトロニクスやEL、太陽電池等の機構解明や機能解明にとり極めて強力な研究手段となりえる。微小試料や薄膜試料測定に向けて時間分解ESRの感度を向上させる目的で、昨年度インピーダンスを下げて1MHzまでの外部変調と、それを用いた高速検出を可能にするように改良してきたが、本年度はナノ秒パルスレーザーと高速ロックインアンプを組み合わせて時間分解ESR測定を行ない評価した。 今回、ナフチリイミド-アントラセン系や有機CT錯体系で、時間分解能は1μ秒であるが通常の時間分解ESRに比べ、感度が数倍向上した信号が得られ、本研究の目的の一部は達成された。この成果は、本年度日本化学会春季年会で発表した。 しかし、信号と変調の位相が十分一致できない問題点が発生し、現在その解決方法を検討している。この問題が解決できれば、さらなる感度の向上が見込まれ、本研究の目的の1つは達成される予定である。 当初の予定では、上記の改良により感度向上させた装置を用いて、本年度に真空蒸着法により形成した薄膜試料の測定に挑戦する計画であったが、この薄膜試料測定に向けて、真空蒸着法によりテスト試料の作成を試みたが、現在のところ均一な膜形成に難航しており、現在条件探索を行っている段階である。また、電圧パルスの高速変調と高速ロックインを組み込んだ分子素子測定に向けたテストを本年度行う予定であったが、装置の高感度化は、すでに上で期待したように、本年度に一部達成できたが、まだ十分ではなく、この段階には進めていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はナノ秒パルスレーザーと高速ロックインアンプを組み合わせて時間分解ESR測定を行ない評価し、時間分解能は1μ秒であるが通常の時間分解ESRに比べ、感度が数倍向上した信号が得られ、本研究の目的の一部は達成された。 しかし、当初予想できなかった信号と変調の位相が十分一致できないという問題点が発生し、装置の高感度化は、まだ十分ではなく現在その解決方法を検討している。このため、当初の予定より遅れているが、この問題が解決できれば、さらなる感度の向上が見込まれ、本研究の目的の1つは達成される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初予想できなかった信号と変調の位相が十分一致できないという問題点の解決が、第一の課題であると考えている。この問題が解決できれば、パルスレーザー励起を電圧パルス励起に変えることはそれ程困難ではないと判断している。 薄膜試料の作成に向けた条件探索は現在行っている最中であり、薄膜用の測定試料を変更することも検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの繰越額は約5万程度であり、ほぼ計画通りの予算執行になっている。次年度は、最終年度であり、この繰越金を物品購入費に使用する予定である。
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