研究課題
論理回路の基礎要素として,AND, OR, XORなどの論理ゲートがある.本研究では,分子演算のための論理ゲートとして,電子スピンの量子性と核酸の塩基配列を同時に活用した超分子系を提案・設計した.DNAの塩基配列を使って,安定ラジカルを合理的に並べ,ラジカルスピン同士の交換結合による合成スピン量子数を演算の出力として用いる.初年度は,電子スピンを包含した分子演算システムの開発を進めるための基盤技術として,核酸塩基の相補的水素結合を利用した分子配列の制御・磁気機能の発現について基礎的知見を得ることを目標にし,溶液中での開殻分子の構造・会合様式と磁気的性質を明らかにすることをめざした.特定の塩基配列を認識して特異的に結合するリガンド分子に,ニトロニルニトロキシドラジカルやTEMPOラジカルなどの安定ラジカルを導入したスピンラベル分子を合成し,種々の分光測定,パルス化電子スピン共鳴(多重共鳴法を含む)等によって,DNA中でのラジカル置換基の配列構造を明らかにした.また,DNAの二重らせん構造に着目して,スピンの自由度とらせんキラリティを共存させたキラルスピン系での分子演算の可能性について初めて提案した.オリゴヌクレオチドの測定等から, DNA二重らせんのキラリティを積極的に活用した分子演算系も十分に構築が可能であることが示唆された.そこで2年め(最終年度)には,DNA・分子スピン集合系のキラリティを直接的に調べる測定系を新たに開発することにした.汎用の磁気測定系(SQUID磁束計)に円偏光マイクロ波を導入するシステムを組み上げ,低温・磁場中で円偏光の輻射場による磁気共鳴の測定系を試作した.60~70 GHz帯のマイクロ波で試験動作することを確認した.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (2件)
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