研究課題/領域番号 |
23655138
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
白幡 直人 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (80421428)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コロイド・超微粒子 / 表面化学 |
研究概要 |
ゲルマニウム(Germanium, Ge)に着目し研究進めた。Siに比べて、(1)大きなバルクの励起子ボーア半径、と(2)小さなバルクバンドギャップ(0.67 eV@室温)にGeの特長がある。ナノ粒子化することで発現する光吸収および発光のブルーシフトが、量子サイズ効果に基づくと仮定すると、紫外-近赤外の非常に広い波長域で発光色チューニングが期待できる。本研究では、効率良くナノ粒子作製ができるレーザ化学合成法を用いて、ナノ粒子の調製を試みた。 アルケンを溶媒とし、炭化水素鎖で保護されたGeナノ粒子を、レーザー化学合成法を用いて調製したところ、粒度分布は1~10 nm程度の範囲で、数十ナノメートルを超える大きさの粒子はなく、バルクGeの励起子ボーア半径以下のサイズの粒子群を効率良く調製できることが分かった。このようにして調製されたサンプルは、蛍光発光特性を示すが、発光スペクトルが従来と同じくブロードで、発光色-サイズの相関が得られなかった。そこで、鋭意研究を進めることで、1サンプルから発光成分を分離抽出可能な「発光色分離法(特願2011-239933)を開発、これまでに、近紫外-可視(~緑)の発光波長域において、各波長帯で発光するナノ粒子を分けることに成功、各々の粒子径を精密測定することで、発光色-サイズ相関性を初めて明らかにした(これらの成果は、日刊工業新聞2011年6月10日や社団法人高分子学会機関誌のHot topicsなどにて公開)。尚、このようにして得られた、各発光色の蛍光量子収率は本研究課題で産業用途としているラベル材に必要な効率を満足する値であった(以上は、欧米学術論文誌投稿準備中である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の復旧に時間を要したため
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の達成は、(1)サイズで近紫外ー近赤外域における発光色が可変可能な発光色ライブラリーの構築と、(2)当該表面への生体分子認識能の付与、を通じて、生体分子が接合した環境半導体ナノ粒子ライブラリーを創り出すことにある。現在、(1)において近紫外-可視短波長における発光色ライブラリー(近紫外5色、紫、青、水色、緑)の作製には成功しており、発光効率も産業使用上問題ないとされる値を満たす。一方で、可視長波長域-近赤外域での発光色可変は、当初予定のレーザ化学合成法では効率良く作製できていない。そこで、本年度は、逆ミセル法に着目し、300℃程度の高温下で電子還元させるプロセスを開発し、これを達成できるよう実験を進めている。 (2)に示した誘導化研究に関しては、既に合成が可能となっている近紫外-可視短波長発光ナノ粒子を対象にして研究を進める。産業応用を見据えた際に、クリックケミストリーの適用が好適であろうと想像される。これを実現するために、アルキン終端ナノ粒子の作製に取り組む。アルキンのヒドロシリル化を避ける必要から、母材となるナノ粒子表面の終端構造は、一般的な水素終端では宜しくない。そこで、ハロゲン化終端ナノ粒子を母材として、アルコキシ化を通じた、アルキン末端の導入を考えている。過去、クリックケミストリーをSiやGeナノ粒子表面で実現させた例はない。本研究では、迅速に効率良く研究を展開させることで、産業応用に好適とされるプロセスの開発を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画は、蛍光発光ナノ粒子の湿式合成と、当該ナノ粒子表面への生体認識官能基の導入に関する。研究費は大半が、高純度試薬および理科学消耗品(ガラス器具やフィルタなど)に充当されると計画されている。
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