研究課題
環境汚染化学物質の生体に及ぼす影響は、これまで寿命や老化に及ぼす影響としては評価されてこなかった。一方、サーチュインファミリーの1つであるSirt1は、脱アセチル化によりヒストンやアポトーシスに関与するp53等の働きを制御し、またインスン/IGF-1(インスリン様成長因子-1)シグナル伝達系を介して寿命延長に作用することが知られている。我々は、Sirt1発現量を指標として、環境汚染化学物質の寿命に及ぼす影響を評価できるのではないかとの新しい着想を得た。昨年度の結果よりSirt1およびSirt2が細胞培養系で充分に測定できること、およびアポトーシス条件下でSirt1発現量が有意に増加することを見出した。本年度は昨年度の成果を基に1.環境ホルモン様作用があるとされるジエチルフタレートがPC12細胞を用いた系で酸化ストレス系を増大されることで栄養因子除去により誘導されたアポトーシスを増強する効果を示すことを明らかにした。2.ジエチルフタレートによるアポトーシス増強効果は、シトクロムC放出増加およびキャスペース3の活性増加に伴って起こっていたが、その過程でSirt1の発現量が有意に上昇(Sirt2は変動なし)していることが明らかになった。3.連携研究者である青森県立保健大学佐藤伸教授の協力のもと妊娠期に低栄養投与されたラットの母体組織および産仔中のSirt1および2の発現量変化を測定したところ、低栄養でSirt1およびSirt2がやや減少する傾向が認められた。以上の結果からSirt1はアポトーシスと連動した動きが確認されたが、アポトーシスが起きた際、あるいはアポトーシスを増強する際に有意に上昇することから、アポトーシスを抑えようとする、つまり恒常性を維持しようとする方向に働いていることが推察された。一方、Sirt2は妊娠期低栄養以外の処置では大きな動きを示すことは無かった。
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Journal of Applied Toxicology
巻: in press ページ: in press
10.1002/jat.2816
Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology
巻: 111 ページ: 113-119
10.1111/j.1742-7843.2012.00869.x