本研究室では以前から酸性雨の影響評価を行っており、雨のみならず土壌や河川水にも影響が及んでいることを示してきた。その中で残雪中のスス量が無視できない量で存在することは以前から把握していたところであった。しかし、我が国に降下する冬期越境汚染物質であるススの降下量はほとんど調査されておらず、その詳細については、いままでほとんどわかっていなかった。 そこで、ススの化学的特徴と降下量を、毎週集められた降雨に対しイオンクロマトグラフを用いることによって評価した。 さらに濾過したススに対して重量天秤によって評価した。 なお、これら分析に用いた試料は、青森県弘前市周辺のいわゆる津軽地域のいくつかの地点において、一年間にわたって収集したものである。 また、冬期においては降雪および積雪を同地域において採取し、同様の評価を実施した。この冬期間の試料採取作業については、本学が東北地方の多雪地域に立地しているという地理的条件が有利に働き、豊富な試料を得ることができた。 以上の分析結果から、ススの降下量は、いままで黄砂に対して報告されていた降下量にほぼ相当する量を測定できた。また、降下物中の塩化物イオン濃度とスス試料の降下量の間に関係が見られている。 採取地点から西側の我が国には明らかなススの発生源がないことから、このことは季節風によって海から運ばれる海塩の量と、大陸から運ばれるススの量が比例していることを示している。
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