研究課題/領域番号 |
23655142
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
東郷 秀雄 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60217461)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 酸化 / アルコール / アルデヒド / ケトン / 環境調和 / 再生再利用 |
研究概要 |
Swern(スワン)酸化反応はアルコールの非金属系酸化反応として,超原子価ヨウ素(V)であるDess-Martin酸化反応と並び、有機反応で最も頻繁に利用されている手法である。しかし、スワン酸化反応はジメチルスルホキシドが酸化剤として機能するため、反応後、アルデヒドやケトンに加えて、致命的悪臭を放すジメチルスルフィドを副生する。このジメチルスルフィドの悪臭はブチルメルカプタンに匹敵する(ブチルメルカプタンは都市ガスやプロパンガス漏れの検知剤としてppmオーダーで添加され、利用されている)。本研究では、最も困難な箇所は純度の高いイオン固定型スルホキシドを如何に合成するかにあるが、合成効率の視点から、アンモニウム型を陽イオン部分とし、対アニオンはBr-とすることにより、エーテルや水に溶けにくいイオン固定型スルホキシドの性質を有すると判断し、新規なイオン固定型スルホキシドを設計合成した。そして、スワン酸化反応で用いるジメチルスルホキシドをイオン固定型スルホキシドに置き換えることにより、スワン酸化反応でアルコールからアルデヒドやケトンを得るとともに、副生するイオン固定型スルフィドは塩なので気化せずに悪臭を全く生じないこと、イオン固定型スルフィドは塩なので目的生成物であるアルデヒドやケトンの分離精製が容易であること、及びイオン固定型スルフィドは回収してイオン固定型スルホキシドに再生再利用できること、など種々の重要な点をほぼ解決して確立し、国際的学術雑誌に論文として成果を発表するとともに、特許を申請した。さらには、このイオン固定型スルホキシドの有機合成化学的用途を展開、確立し、現在、薬品メーカーから本研究で開発したイオン固定型スルホキシドの製品化を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規なイオン固定型スルホキシドを設計、合成開発し、種々のアルコールの環境調和型スワン酸化反応に展開し、その有効性と汎用性を確立し、再生再利用を確立した。これらの成果は国際的学術雑誌に論文として発表するとともに、特許を申請した。さらには,本研究で開発したイオン固定型スルホキシドを薬品メーカーからの製品化にも繋げることができたことから、当初の目標を充分に達成している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、合成が容易で、安価なコストで商品化も容易なイオン固定型スルフィドを開発し、Corey-Kim酸化反応試剤として種々のアルコールの環境調和型酸化反応に展開し、その有効性と汎用性を確立し、再生再利用を確立する。これらの成果は国際的学術雑誌に論文として発表するとともに、特許を申請する。さらには,本研究で開発した新規のイオン固定型スルフィドを薬品メーカーからの製品化にも繋げる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
新規なイオン固定型スルフィドの合成開発と環境調和型酸化剤としての汎用性の確立には消耗費として試薬、溶媒、及びガラス器具類の補充が必要である。また、合成した化学物質の構造解析等の分析に、千葉大学の分析センターに設置されている核磁気共鳴装置、質量分析装置、元素分析装置、及びX線結晶構造解析装置などによる分析料金が必要である。
|