本研究は二酸化炭素・イオン液体混合系において、光触媒をもちいて二酸化炭素の光還元をおこない、効率的な二酸化炭素処理システムを開発することを目的とするものである。今年度は二種類のレニウム触媒を合成し、電子供与剤としてトリエタノールアミンを用いて、イオン液体のアニオンおよびカチオンを系統的に変化させ、また温度圧力条件などをふることで、効率的な反応条件の探索をおこなった。その結果、反応効率はアニオン、カチオンともに強く依存し、また温度圧力によっても二酸化炭素の還元速度が非常に大きく影響されることがわかった。カチオンとしてはイミダゾリウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系のいずれも検討をおこなったが、アンモニウム系やホスホニウム系ではほとんど反応が進まなかった。イミダゾリウム系では還元反応が進んだが、側鎖が長すぎると反応があまり進行しないことが明らかとなった。またアニオンについては、親水性のイオン液体では触媒の安定性が非常に悪く反応が進行しないことが明らかとなった。一般に疎水性のイオン液体では比較的効率よく反応が進行したが、ヘキサフルオロホスフェートでは電子供与剤とうまく混合せず、光反応を進めることができなかった。また圧力を上げると二酸化炭素の溶解度が増え反応速度が上がることが期待されたが、必ずしも期待した結果とはならず実験を行った中では5MPaが最適であった。また温度を上げると反応速度が上がるが触媒の安定性が下がることもわかった。一方で、過渡回折格子レーザー分光法を併用して、イオン液体の様々な条件下での輸送性質を測定し、反応速度過程に対する効果の補助的な評価をおこなった。 以上の結果をふまえて、今後は触媒の選択と電子供与剤をさらにいくつか検討するとともに、相補的に電解還元などの手法を用いるなど、反応効率を上げるための方策を検討していく予定である。
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