研究課題/領域番号 |
23655147
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
大浦 健 名城大学, 農学部, 准教授 (60315851)
|
研究分担者 |
坂口 眞人 静岡県立大学, 付置研究所, 教授 (40113328)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | セルロース / 糖化 / メカノケミカル反応 / ブロック共重合体 / メカノラジカル |
研究概要 |
セルロースはグルコースを単位ユニットとした高分子であり、地球上で最大の再生可能資源である。セルロース分解によるグルコースの生産技術や、セルロースの機能改質はバイオマスの有効利用の観点から極めて重要な課題である。そこで本年度は、小型・簡便なセルロース分解方法として、機械的粉砕によるセルロースの糖化を検討した。実験方法としては、10mLねじ口試験管に所定量の微結晶セルロースとアルミナボールHD-2(直径2mm)0.95gを2mlの純水中に入れ、密封後、振とう機(ヤマト科学社製)を用いて機械的粉砕を行った。所定時間振とう後、上澄みの回収を行い、セルロース主鎖切断で生じたグルコース生成量の測定を行った。水系におけるセルロースの添加量や振とう時間による糖化の影響を検討したところ、添加量ならびに振とう時間が増加するにつれてグルコースの生成量が増加する傾向が見られた。よって、セルロースは機械的粉砕により主鎖の切断(メカノケミカル反応)が生じることが明らかとなった。次に、メカノケミカル反応によって生じたセルロース主鎖末端のラジカル(メカノラジカル)を利用して、新規セルロースブロック共重合体の合成を試みた。第二成分にはメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を用いた。合成方法はアルミナボール0.42gが入ったガラス管にセルロース25mgとHEMA0.02mgを加え、真空下で封印した後、振とう機によって5時間メカノケミカル反応を行い、反応生成物をメタノールで洗浄した後、残渣をFT-IRを用いて評価した。その結果、合成産物にはHEMAに由来するカルボニル基の吸収が確認されたことから、新規なセルロース-ポリHEMAジブロック共重合体が作成できたと思われる。セルロース、ポリHEMA共に生体適合性を有するため、本新規ポリマーは今後新たな生体適合材料として期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、本年度はセルロースの機械的粉砕による基礎的知見の取集を計画していたが、今年度後半にはほぼ計画通りのデータが得られ、次年度の計画していた新規共重合体の合成に取り組み基礎的データの蓄積を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度はメカノケミカル反応によって生じたポリマー末端や新規共重合体の物性評価を中心に行っていく予定である。具体的には、ESRを用いてポリマー末端のラジカルの同定を行う。また、メカノケミカル反応で得られたセルロース-ポリHEMAジブロック共重合体は官能基を修飾することで両親媒性の機能を発揮できると思われる。そこで種々の組成比のポリマーを作製し、水系での分散性を評価していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
新規共重合体合成に係るガラス器具類ならびに試薬類の購入の他、構造解析(NMR、TOFMS)に係る委託分析料に充当する。
|