研究課題
様々な生命現象を理解するためには遺伝子の発現制御機構を解き明かす必要がある。DNAのメチル化(m5C)やヒドロキシメチル化(hm5C)などの化学修飾はヒストン修飾に並んで重要なエピゲノム情報である。本研究では、高感度な質量分析法を駆使することでヒトおよびマウスのゲノム中から新規なDNA修飾を探索し、構造を決定することで、エピジェネティックスのパラダイムシフトを目指している。本年度は、マウス脳由来ゲノムから見出した新規シチジン修飾体C*について解析を行った。C*の存在量をマスクロマトグラムの強度比から推定したところhm5Cの1/10程度であることが判明した。精密質量の測定から修飾基の元素組成を決定しC*の化学構造の推定を行った。さらにC*が、組織からゲノムを抽出する際に生じる反応性化学種によって修飾されたものである可能性があるため、複数の手法でゲノムを抽出した。さらに様々な反応性化学種を消去する目的で酢酸ヒドラジドを添加してC*の回収量を比較した。その結果、いずれの条件においてもC*が検出されたことから、C*は新規DNA修飾体である可能性が高まった。
2: おおむね順調に進展している
マウス組織から見出したC*は存在量が微量であるため、ゲノム抽出の際に生じたアーティファクトである可能性を否定することが先決である。本年度の研究で、複数の抽出方法を試したところ再現性良くC*の検出に成功したことから、C*が新規DNA修飾である可能性が高まったと考えている。今後は、C*の化学構造の決定、ゲノム上の位置、機能、生合成などやるべきことはたくさんあるが、概ね順調に研究が進行している。
今後は、まずC*の化学構造を決定する必要がある。推定された構造の標品を有機合成し、ゲノムから精製したC*と様々な物性を比較解析することで決定する予定である。具体的にはLC/MS/MSを用いたcoinjectionを行う予定である。また、C*が酵素的に生じるものであるとするとゲノム上の特定の配列に存在することが考えられる。複数の制限酵素を用いて配列特異的なゲノムの断片化を行い、生じた末端塩基にC*が存在するかをLC/MSを用いて解析することを計画している。さらにC*特異的な抗体を作成し、C*が存在する領域を特定することも計画している。
上記の計画を実行するために、主に試薬類や酵素、LC/MS解析に使用する分析カラムや試薬類と消耗品に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (7件)
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