本研究では独自に開発した修飾核酸をT7プロモータ配列に導入し、その転写活性化能を更に別の人工核酸との三重鎖形成により制御する「三重鎖形成により制御可能な人工T7プロモータ」を開発した。 まずT7プロモータの配列の非鋳型鎖の9個のピリミジン塩基のいくつかに対しC→ピリミドインドール型修飾塩基(PPI)、T→シュードウリジンの塩基置換を行い、TFO結合サイトをもつDNA二重鎖を化学合成した。また、PPIのかわりにシュードイソシチジンを導入した二重鎖も合成した。 上記で合成した種々の人工プロモータとT7RNAポリメラーゼを用いて転写反応を行いゲル電気泳動で定量した。その結果、これらの修飾を導入したDNAは末修飾のDNAの20%~80%の効率で転写され、修飾塩基を有するT7プロモータがRNAポリメラーゼに認識され、転写を活性化する性質をもつことが分かった。T7RNAポリメラーゼは主にT7プロモータ配列の鋳型鎖のプリン塩基を認識しているため、PPIなどの立体的に嵩高い修飾基をCのかわりに導入しても転写活性が維持されたと予想される。 さらに、転写活性が認められたDNAに対して、PPIを認識するプロピレンリンカー、ジュードウリジンを認識する5-ブモロシトシンを含む三重鎖形成核酸(TFO)を作用させると、TFOの容量依存的に転写反応が阻害されることを示唆する結果を得られ、三重鎖形成により制御可能な人工T7プロモータの開発に成功した。
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