研究課題/領域番号 |
23655156
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
菊池 純一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (90153056)
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研究分担者 |
安原 主馬 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (90545716)
田原 圭志朗 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (50622297)
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キーワード | 自己組織化 / 超薄膜 / 超分子化学 / 分子認識 / 脂質 |
研究概要 |
本研究では、細胞の分裂現象の重要性に着目し、生体系とは異なる原理をもちいて、出芽と分裂を自在に制御できる人工細胞のde novoデザインについて研究を行っている。平成24年度は、以下の成果が得られた。 1.モデル細胞膜系で出芽・分裂を起こすための物理化学的因子の探索: 前年度にモデル細胞系で観測された出芽・分裂挙動に関して、その機構を物理化学的視点から詳細に検討した。その結果、膜分裂は、シグナル分子のモデル細胞膜への結合、それに誘起される膜の相分離、さらにそれに起因する膜の出芽という3段階のプロセスから構成されていることを明らかにした。第一段階のシグナル結合過程に影響を与える温度、pH、イオン強度などの物理化学的因子については、分光学的測定から定量的に評価を行った。また、第二段階の相分離過程については、示差走査熱量分析結果を定量化することで得られる相転移パラメータと、蛍光顕微鏡観察結果との相関を明らかにした。 2.出芽・分裂を起こす人工細胞膜のde novoデザイン: 上記の結果と、分子モデル計算による検討から、膜を形成する脂質の臨界充填パラメータを制御するための分子間相互作用を精密に考慮した分子設計を行うことで、人工細胞膜に出芽・分裂を起こさせることができるという設計指針を提示した。 3.人工メンブレントラフィックシステムへの展開: 合成ペプチド脂質あるいはセラソーム形成脂質から構成されるモデル細胞膜を用いて、生細胞への遺伝子デリバリーが可能な系を見出した。この人工メンブレントラフィックシステムにおいて、モデル細胞膜と生細胞の生体膜との相互作用に出芽・分裂過程がどのように関わっているかについて評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に計画していた(1)モデル細胞膜系で出芽・分裂を起こすための物理化学的因子の探索と、それにもとづく(2)出芽・分裂を起こす人工細胞膜のde novoデザインの指針提示が、いずれも達成された。また、(3)人工メンブレントラフィックシステムへの展開についても、モデル細胞膜による生細胞への遺伝子導入が可能になったという知見を得た。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、基本的には当初計画に従い、以下の3つの観点から研究を推進する。 1.モデル細胞膜系で出芽・分裂を起こすための物理化学的因子の探索については、シグナル分子の膜への結合、それに誘起される膜相分離と膜の出芽という3段階のプロセスの個々について、影響を与える各物理化学的因子のさらなる定量化を図る。 2.出芽・分裂を起こす人工細胞膜のde novoデザインについては、前年度に提示した設計指針にもとづいて、シグナル分子や脂質分子の構造を変化させて膜の動的挙動を評価し、その検証を行う。 3.人工メンブレントラフィックシステムへの展開については、前年度に見出した遺伝子デリバリー系の機構解明を目指すとともに、新たな人工メンブレントラフィックシステム系の開拓を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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