研究課題/領域番号 |
23655164
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
渡部 暁 独立行政法人理化学研究所, NMRパイプライン高度化研究チーム, 上級研究員 (80300945)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | DNA / 複製 / 再構成 / cis-特異的 / 無細胞合成系 / 抗体 / 分子進化 / 合成生物学 |
研究概要 |
本研究では外部因子に依存して特定の配列をもつ配列が選択的に複製・増幅される系の構築を目的としている。本年度はその要素技術である、(1)選択制の付与のための複製開始因子RepAの発現系と、(2)実用化の要となる試験管内複製反応の高効率化の準備を行った。(1)は以下を実施した。RepAの発現系は、Cis-特異的な複製開始因子RepAの無細胞タンパク質合成系での発現系を構築し、実際に沈殿画分に効率よく発現されることを確認した。このタンパク質のスプリット化には試行錯誤と時間を要することが予想されたため、まず酵素相補アッセイによる迅速なスクリーニング系の立ち上げを検討し必要な準備を進めた。ポジコンとなる既知スプリットタンパク質と既知結合タンパク質の組でアッセイ系を動かして正常な動作を確認した。また、結合タンパク質として抗EGFR抗体の単鎖抗体MR1-1の準備を行った。これらの要素と(2)に述べる複製評価系を組わせることでRepAの最適なスプリット化酵素を得る準備がほぼ整った。(2)は以下を実施した。試験管内複製系は、既知の試験管内複製系を参考にして必要となるタンパク質因子、夾雑するDNA分解活性の測定、複製産物のReal Time PCRによる評価系などの準備を進めた。本系は完全な再構成系ではなく一部にクルードな抽出液を用いることもあり、持ち込みのDNA分解活性により正味の増幅量が少なくみられることが分かった。また、本系は時間とともに線形に増幅する系であるため、多大なライブラリーから希少分子を選択増幅するためには、今の仕組みで反応時間を延長しただけでは原理的に不十分であり、新たに指数増幅ステップの導入などの対策が必要であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
要素技術の準備と既知方法の改善点の洗い出しは当初の予定通りの進行で概ね達成しているが、各要素の組み合わせでの評価が未実施であることと、既知方法の弱点と改善計画が明らかになったため、上記の評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで準備を進めてきた要素技術を完成させるとともに、その組み合わせを検討する。実用的なシステム構築には、指数増幅と選択性とがキーとなる。文献ではプラスミド複製の開始に必須な要素の多くは同定されているが、その複製効率は投入した鋳型量と同程度以下と低効率である。また、増幅の機構から線形の増幅であり、単純にそれを再現して反応時間を延長しただけでは実用上不十分であり意味がない。本研究では、ライブラリーから特定の因子を選択的に増幅することが趣旨であるため、実用的に十分高効率化な複製系を目指して、新たに指数増幅するステップの導入検討を推し進める。高い選択性のためには、よいスプリット化RepAの探索が鍵となる。そのためのスクリーニング基盤は概ね準備が整ったため、多数の断片化RepAを評価し、候補のなかから選択制の高いスプリット化RepAを探索する。スプリット化RepAと複製系とでシステム構築後は、単鎖抗体の可変領域にランダム塩基を導入した単鎖抗体遺伝子ライブラリーを発現させ、スプリット化RepAをレポーターとして用いた酵素相補アッセイにより、特定のペプチドエピトープを特異的に認識する単鎖抗体遺伝子ととそうでない単鎖抗体遺伝子との挙動を分析することで選択性と増幅効率のトータルでのシステム効率の実証実験を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H23年度に実施された要素技術の準備実験の結果を受けて、各技術の完成のための実験が当初予測よりも時間を要することが判明したため、一部、年度内での実施が見送られ、その消耗品費用として計上されていた額のH23年度未使用分が生じた。H24年度には当初予定の実用化実験に加えて、当該繰り越し実験、および検討により新たに必要性が判明した補強実験との実施費用が生じる見込みであるが、当初のH24年度研究費と併せた残予算を合理的に執行することで、使用計画の重大な変更は必要ないと考えている。
|