研究課題/領域番号 |
23655167
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村越 敬 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40241301)
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研究分担者 |
保田 諭 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (90400639)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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キーワード | プラズモン / カーボンナノチューブ / 表面増強ラマン / 電気化学 / 金属ナノダイマー / ラマン |
研究概要 |
金属の表面プラズモン増強電場を光反応場と利用し、カーボンナノチューブに所望の格子欠陥や異種元素置換構造、エッジ構造、ナノグラフェンを作り出すナノ加工技術を確立する。上記目的を達成するために、表面増強ラマン散乱活性な金属ナノダイマー構造と単一単層カーボンナノチューブを組み合わせ、局所光化学反応を誘起する可能性について検討した。また、系の電気化学電位を変化させることにより反応性を積極的に制御すること試みた。ナノスフェアリソグラフィー法を用いて、SERS高活性なAu nano-dimer構造を作成し、ここに孤立分散させたSWNTを担持した。このSWNT担持基板を水溶液中に浸漬し、電気化学電位制御下において励起光波長 785 nmにてSERSスペクトル測定を行った。得られたSERSスペクトルから、チューブの直径振動方位のモードであるradial breathing mode(RBM)が観測され、そのピークは一つであった。観察されるRBMは、ナノチューブの直径分布を反映することから、観測された単一のRBMピークは、Auギャップ間に単一SWNTが担持しているのを示す。次に、担持された単一SWNTのSERSスペクトルの電気化学電位依存性について評価を行った。構造の欠陥由来のD-band(1300 cm-1付近)、グラフェン構造由来のG-band(1600 cm-1付近)強度が電位に依存して変化した。特に0 V より正電位側においては、全体的なスペクトル強度の減少に加え、D-bandの相対強度が増加する傾向が観測された。この変化には可逆性が無く、電位を負に掃引してもD-bandが再び減少することはなかった。このことから、電気化学電位によりSWNTへの局所的な光欠陥導入が制御可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
金属ナノギャップ間にナノチューブを担持し、光照射後、実際に欠陥構造由来のD-bandピークの増加が観察され、また、電気化学により制御可能であることが明らかとなった。この結果は、電気化学電位により、SWNTへの局所的な光欠陥導入を示すものであり、本研究の目的であるナノ加工技術の基礎的技術と知見となった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のナノ加工技術をより最適化し、自在にナノチューブ内に所望の欠陥・ヘテロ構造を導入する実験を進める。このため、予算の一部を来年度に繰越をし、この繰越金を用いて上記実験を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定をしていた装置を購入せずに、ナノチューブ内に欠陥・ヘテロ構造を導入することに成功した。この結果をより発展させるため、次年度の研究費は、前年度の繰越金と合わせて、主にナノ加工装置開発に使用する予定である。
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