研究概要 |
有機無機ペロブスカイト型化合物において、有機層の三重項励起状態と、無機層のワニエ励起子とが共鳴する材料を作製し、その共鳴領域における特異的な発光特性を観測した。具体的には、(C10H7CH2NH3)2PbBrxI4-x薄膜において、ワニエ・フレンケル励起子準位が共鳴領域近傍に存在すると推察されるx = 1.75及びx = 1.87の薄膜を作製し, 光学特性の解析を行った. それぞれの薄膜において, 490 nm及び500 nmにおいて発光ピークが観測された. 一方, x = 1.75及びx = 1.87の薄膜において, 520 ~ 566 nmにかけて発光ピークは観測されなかった. これらの発光ピークは, ナフチルメチル基における基底状態の異なる振動準位への遷移に対応する. 無機層における混晶形成に伴うわずかな構造変化により, これらの振動準位への遷移の禁制化による消光は生じないものと推察される. よって, ワニエ励起子のエネルギー準位に近いナフタレン三重項準位からの発光が選択的に生じたためであると考えられる. 以上の結果から, ワニエ・フレンケル励起子準位が共鳴領域近傍に存在することで, 特異な発光が生じることが示唆された.この結果は、当初目的としていた、有機無機共鳴励起状態における特異的な光学特性であると推察される。そのため、この化合物における励起子特性や、励起子形成後のダイナミクスについて詳細に調査し、共鳴励起状態の特性を明確にしたい。
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