研究課題/領域番号 |
23655169
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
畠山 望 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50312666)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 太陽電池 / シミュレーション工学 / 化学工学 |
研究概要 |
本研究は,独自の超高速化量子分子動力学シミュレーションに基づき,動的モンテカルロ法によるキャリア移動シミュレータ,電極材料のμm~mmスケールのメソ構造を構築・解析する多孔質シミュレータ,そして実測と比較できるIV特性シミュレータを融合し,実践的な色素増感太陽電池マルチレベルシミュレータを開発して材料開発を加速化することを目的とする.特に,メソ構造の工夫によって諸問題を改善する可能性を探るツールとすべく,電極構造への色素分子や電解質のパッキング状態を反映可能なシミュレータを構築し,固体電解質系などに応用展開する. 本年度は,電極表面上の色素分子の光励起を解析するために,パラメータ化によって大規模系を高速に解析することができる独自のtight-binding量子化学計算プログラムについて,各種電極材や色素分子へ適用するためのパラメータ精密化に成功した.また,すでに基本部分を開発済みの多孔質構造シミュレータについて,電極構造モデリング機能の改良を行った.構築したモデルの物性を評価するために,(1)空隙率分布や屈曲度を精密に解析するための多孔質特性解析シミュレータ,(2)多孔質電極空隙への色素吸着や電解質分布を解析する色素・電解質パッキングシミュレータ,(3)電解液中のヨウ素イオンや固体電解質中のホール移動を解析する電気伝導・物質移動シミュレータを順次開発し,検証計算を進めてきた.量子計算結果とメソレベル解析結果を入力値とする独自のIV特性シミュレータについては,支配方程式まで立ち戻った精密化を図り,固体電解質へ適用するための改良に成功した.得られた研究成果について,電池討論会で発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに研究が実施されたため.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き各シミュレータの開発を進め,これらをIV特性シミュレータへと収斂させるマルチレベル化を行う.さらに応用研究に展開して有用性を示すべく,耐久性に問題のある電解溶液の代替として期待されている,固体電解質に適用して解析を進める.具体的にはCuIやSuSCNを取り上げ,現実に則した構造モデリングを行い,最終的に光電流・電圧の計算結果を文献実測値と比較しながら,シミュレータの更なる精度向上を図る.固体材料は多孔質材内部に浸透しにくいため電極材との密着性が悪く,結果として効率が悪いとされているが,理想的接触構造をモデル化して理論的な効率をシミュレーションによって示し,実際の材料設計の指針とすることを目標にする.得られた研究成果について,応用物理学会,電気化学会,電池討論会等で発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成24年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.
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