研究課題/領域番号 |
23655172
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中野 幸司 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70345099)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 両極性 / チオフェン |
研究概要 |
本研究では,ホール輸送性(p型)有機半導体層および電子輸送性(n型)有機半導体層からなるラメラ構造の構築を目的とする.目的のラメラ構造をもつ材料には,ホールおよび電子の高い電荷移動度が見込まれ,両極性有機電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池への展開が期待できる.1)今年度は,電荷輸送を担う有機半導体部分の基本骨格として,高い電荷移動度が期待できるオリゴチオフェンを選定した.ホール輸送性有機半導体層として,まずチオフェン三量体の一方にアルキル基が置換した化合物を調製した(化合物1).また,電子輸送性有機半導体層として,オリゴエチレングリコール基をもつカルボニル基がチオフェン三量体の一方に置換した化合物を調製した(化合物2).この化合物1および化合物2のヘテロ二量体を形成させるための連結基としてアルキレン基を選定し,化合物1および化合物2を連結させた化合物の合成に成功した(なお,化合物2の骨格での電子輸送性能が向上することを期待して,化合物2と連結基とはカルボニル基を介して連結させている).また,同様のアプローチによって,チオフェン三量体に替えて,チオフェン四量体をもちいたヘテロ二量体化合物の合成にも成功した.2)次年度に有機半導体部分の基本骨格としてもちいることを予定しているヘテロアセンに関連して,フラン,ホスホール,シロールなどのヘテロールとベンゼン環が縮環した化合物の新規合成法の開発に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,当初の予定通り,ホール輸送性および電子輸送性が期待できるオリゴチオフェンヘテロ二量体の合成に成功し,その合成ルートの確立もできた.一方,想定していた中間相(液晶相)や相分離構造の発現確認には至っていない.これは,中間相(液晶相)や相分離構造の発現のために導入したアルキル基やオリゴエチレングリコール基がうまく機能していないことが原因と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
1)今年度に合成したオリゴチオフェンのヘテロ二量体に関して,より長いアルキル基やオリゴエチレングリコール基が置換した誘導体を合成し,中間相(液晶相)や相分離構造の発現を目指す.目的の構造が得られれば,両極性有機半導体としての特性を評価する.2)ヘテロールとベンゼン環が縮環したヘテロアセンを有機半導体部分の基本骨格にもちいる.今年度のオリゴチオフェンヘテロ二量体と同様のアプローチで,両極性が期待できるヘテロアセンのヘテロ二量体を合成し,置換基による中間相(液晶相)や相分離構造の発現を目指す.これにより,両親媒性分子のミクロ相分離を利用した分子配列制御のコンセプトを確立する.目的の構造が得られれば,両極性有機半導体としての特性を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度に使用する予定の研究費」は,今年度に達成できなかったオリゴチオフェンを基本骨格とする検討に関して使用する.具体的には,より長いアルキル基やオリゴエチレングリコール基が置換したオリゴチオフェンのヘテロ二量体の合成とその評価に関しての検討に使用する. 次年度に請求する研究費に関しては,主にヘテロアセンのヘテロ二量体の合成と性能評価のための物品費や装置利用料などとして使用する.また,新しく得られた研究成果を発表するための旅費としても使用する.
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