量子コンピュータは、量子力学の特徴である重ね合わせ状態を単位とすることができる「量子ビット」にゲート操作を施して情報処理を行う演算手法である。本研究では、実用的な量子コンピュータの実現に向けた合成化学からのアプローチとして、31P核を主体としたNMR量子ビット数を有する分子系の構築を目指した。sp2混成状態のリン原子を含む分子を立体選択的に合成する手法と、P=P構造を化学的に切断する手法を活用することによって非等価な二つ31P核を含む分子構造を構築し、NMR特性が量子情報処理を可能とする条件を満たすことを確認するとともに、錯体形成によるビット数の効率的な増大を図ることができることを見出した。
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