研究課題/領域番号 |
23655174
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
従来の燃料電池は燃料と空気をそれぞれ燃料極と空気極に分けて供給する構造であるため、燃料電池を積層(スタック)化する場合には高価なガスセパレーターが必要であった。これに対して、本研究が提案する燃料電池は燃料と空気の混合ガス中で作動させる単室構造であるので、ガスセパレーター無しにスタック化でき、燃料電池システムの大幅なコストダウンを期待できる。今年度は、燃料に水素ガスを使用した系を対象とし、混合ガス発電を可能にする燃料極と空気極を探索し、最終的にガスセパレーターを有しない燃料電池スタックの発電特性を評価した。 作動温度を室温から100℃と設定し、爆発限界外の80%水素と20%空気から成る混合ガス供給下で各種金属もしくは金属酸化物電極の電位と電極反応抵抗を測定した。この中でPt電極は-800mV、Mn2O3電極は+250mVの電位を示すことが分かった。さらに、これら二つの電極特性を改善するため、Pt電極に少量のAuを添加したところ、水素ガスと酸素ガスの気相反応を完全に抑制でき、またMn2O3電極に少量のPrをドープすることで、電極反応抵抗を大きく低減できた。単電池の発電特性を最適化した結果、作動温度50℃、混合ガス流速30mL/minで約50mW/cm2を発揮した。 上記単セルをガスセパレーター無しに直接接合し、スタックセルを構成すると、開回路電圧と出力はともに単セルの枚数に比例して増加することを確認できた。ここで強調されることとして、これらの発電特性はスタックセルが供給ガスに平行でも垂直でも全く影響されなかったことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、二年間で単セルの開発とスタックセルの評価を行う予定であったが、初年度でこれらの目標を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
セパレーターフリーの燃料電池スタックをさらに展開するため、水素-空気燃料電池以外にダイレクトメタノール燃料電池スタックにその適用を検討する。ダイレクトメタノール燃料電池では、セパレーターがスタックセル体積の数割を占めており、これを無くすことができれば、コンパクトなスタック設計が可能になる。これは携帯用途として大いに意義がある。 研究方針としては、初年度に設計したPtAu電極とPr-ドープMn2O3電極をそのまま適用し、メタノール水に空気を供給した系で単セルの特性を評価する。もし電極電位や電極反応抵抗に問題が有れば、電極材の修飾を適宜行う。最終的に、最適化した単セルを複数枚スタック化して、理想的な発電特性が発揮されることを実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度では研究が順調に進捗したため、物品費を予定以上に抑えることができた。今年度も研究が同様に推移すると予想されるので、二ヶ月ほどではあるが、研究補助員を雇用し、研究をさらに推進したいと考えている。
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