本研究では、従来の燃料電池が燃料と空気をそれぞれ燃料極と空気極に分けて供給するのに対して、燃料と空気の混合ガス中で一方の電極が燃料酸化反応、また他方の電極が酸素還元反応を選択的に起こし発電させるものである。これによって、燃料電池をスタック化する場合、従来の燃料電池で必要とした、高価なガスセパレーターが不要となるので、燃料電池システムの大幅なコストダウンを期待できる。昨年度は「水素-空気混合ガス発電」を試み、燃料極として少量のAuを添加したPt/C電極、また空気極としてPrをドーピングしたMn2O3/C電極がそれぞれ有望であることを見出すとともに、作動温度50℃、水素:空気体積比=8:2、混合ガス流速30ml min-1で50mW cm-2の出力密度を発揮させた。今年度は昨年度に見出した燃料極と空気極を活用し、「メタノール-空気混合液発電」を検討した。電解質にSn0.9In0.1P2O7-PTFEコンポジット膜を使用し、これに燃料極と空気極を取り付け、ハーフセル、シングルセルもしくはスタックセルを構成し、触媒や発電特性を評価した。ハーフセルの実験によって、PtAu/C電極とPr-ドープMn2O3電極はともにメタノール-空気混合液には非電気化学的反応には不活性であり、また前者と後者の混合液の中での電位は参照極に対してそれぞれ-430mVと+250mVを示し、混合液発電の電極として有望であることが分かった。さらに、シングルセルの実験では、本電池は室温のメタノール-空気混合液中で800mV以上の電圧を発生し、7mW cm-2の出力密度を発揮することが見出された。最後に、スタックセルの実験を通して、セル電圧と出力がセパレーター無しでもセル数に比例して増加することが実証された。
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