研究課題/領域番号 |
23655176
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三崎 雅裕 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00462862)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
PDMSスタンプの表面改質として、フォトクロミック色素の一種であるスピロピランを用いた濡れ性コントロールに挑戦した。当該年度では、導電性高分子のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を対象として、そのスタンプ上の成膜と被写体への転写の両方を好適に行えるような条件を探索した。具体的には、スタンプ上での成膜の際、スピロピラン化合物がメロシアニン(PMC)体の状態で、PEDOT/PSSを塗布して薄膜形成を試みた。一方、基板への転写では、スピロピラン化合物がスピロ(SP)体の状態で、PEDOT/PSS薄膜をスタンプから基板上に転写できるか検討した。実験では、PDMSと硬化剤の10 :1混合ゲルをシリコンウエハー上にキャストし、80℃で1時間加熱して約1mm厚のPDMSシートを作製した。表面修飾にはスピロピランとして6-nitro-3’,3’-dimethyl-1’-octadecylspiro[2H-1-benzopyran-2,2’-indoline] (SP18)を使用した。SP18クロロホルム溶液にPDMSシートを10分間浸漬させたのち、PDMSをイオン交換水で洗浄した。次に、SP18修飾PDMSシートに365nmの紫外光を照射し、PEDOT/PSSをスピンコートした。有機薄膜の基板への転写は、80℃での加熱、圧着により行った。SP18修飾PDMSシートは、紫外線照射した部位だけ紫色に着色し、SP体からPMC体へとフォトクロミズムを示すことが確認された。また、PEDOT/PSSをスピンコートすると、SP体の部位には塗布されず、PMC体の部位のみ成膜できることが分かった。更に、加熱によりPMC体はSP体へと変化することを利用して、PEDOT/PSSをSP18修飾PDMSシートから基板に転写させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEDOT/PSSインクを対象として、当該年度に予定していたPDMSスタンプの表面修飾、その上での成膜、基板への転写を柱とする基本計画は概ね達成できたが、PEDOT/PSS以外の高分子インクの探索、及び、PDMSスタンプへの化学的修飾については更なる検討の必要があるため。
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今後の研究の推進方策 |
PEDOT/PSS以外の高分子インクの探索として、ポリフルオレンやポリ(p-フェニレンヴィニレン)(PPV)などの発光材料、バソクプロイン(BCP)などのホールブロッキング・電子輸送材料を検討する。吸収・蛍光スペクトル測定、原子間力顕微鏡(AFM)観察、電子顕微鏡(SEM,TEM)観察によって多層膜の評価を行う。また、実際にこれらの高分子インクを積層した機能分離型構造の高分子EL素子を作製し、電流電圧輝度(IVL)特性や発光スペクトルを評価する。従来の交互積層法で作製した素子と駆動電圧や発光効率の面において比較・検討を行うと共に、高分子ELの高効率化に向けて、これまでの経験を活かしながら研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品(マルチチャンネル分光器)を安く購入できたため、デバイス用の基板や薬品、TEM観察用のフィルムと現像剤など必要な消耗品の購入にあてる。また、旅費については、国内調査予定地としてつくば市、外国調査予定地としてアメリカ合衆国を計画している。
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