研究概要 |
ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプの表面改質として、フォトクロミック色素の一種であるスピロピランを用いた濡れ性コントロールに挑戦した。前年度までに、導電性高分子のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を対象として、スタンプ上での成膜の際はスピロピラン化合物がメロシアニン(PMC)体の状態でPEDOT/PSSを塗布し、基板への転写の際はスピロピラン化合物がスピロ(SP)体の状態でスタンプから基板上にPEDOT/PSS膜を転写することに成功した。当該年度は、異性化の際にマスクを通して露光することで、任意のパターンの形成を試みた。 実験でPDMSの表面修飾に用いるスピロピランとして、6-nitro-3’,3’-dimethyl-1’-octadecylspiro[2H-1-benzopyran-2,2’-indoline] (SP18)を使用した。SP18で修飾したPDMSシートは、紫外線照射した部位だけ紫色に着色し、SP体からPMC体へとフォトクロミズムを示すことが確認された。PEDOT/PSSをスピンコートすると、SP体の部位には塗布されず、PMC体の部位のみ成膜できることが分かった。そこで、フォトマスク(長さ6mm、線幅は0.1mm又はチャンネル長0.05mm)を通して紫外線を露光し、その後フォトマスクを取り除いてPEDOT/PSSをスピンコートした。80℃で加熱しながらガラス基板に圧着・転写したPEDOT/PSS膜は、マスクの形状と完全に一致した。この結果により、マイクロオーダーの高精細なパターンを形成できることが実証された。
|