本研究では、プリンテッドエレクトロニクスの基盤技術として、スピロピランを吸着させたシリコーンゴムをスタンプとして用いた新規コンタクトプリンティング(CP)法の開発に挑戦した。前年度までに、シリコーンゴム(PDMS)をスピロピラン溶液に浸漬することでスピロピランを配したスタンプを形成させることを見出し、有機薄膜の塗り分け(パターンニング)に成功した。当該年度は、実際にデバイスを作成することで、有機ELにおける塗り重ね(多層化)の影響を検討した。 実験では、トランジスタ構造の横型素子および有機ELに用いられる縦型素子の2種類のデバイスを作製した。まず、ペンタセンを半導体層とした横型素子において、従来の真空蒸着法で形成したAuのソース・ドレイン(SD)電極とCP法で形成した導電性高分子(PEDOT:PSS)のSD電極の素子特性の比較を行い、接触抵抗の評価を行った。その結果、電極/有機薄膜界面の接触抵抗において、CP法では従来法よりも約50倍高い値を示した。一方、銅フタロシアニン(CuPc)を半導体層、PEDOT:PSSをアノード電極とした縦型素子において、CP法にのみ注入律速に起因したpoole-frenkel伝導が確認された。これは界面に存在する酸素や水、構造欠陥がトラップとして電気特性に影響したためと考えられる。しかし、高電界側では従来素子と同様に空間電荷制限電流(SCLC)モードへと移行したことから、有機EL応用におけるCP法の有用性が実証された。
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