研究課題/領域番号 |
23655179
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片平 賀子 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (90315143)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | フレキシブルチューブデバイス / 有機EL / 有機太陽電池 |
研究概要 |
フレキシブルチューブを基板かつ封止保護膜として、有機半導体材料の溶液をチューブ内に通過させることにより製膜する簡易プロセスで有機フレキシブルチューブデバイスを作製し、そのチューブデバイスを複数接続することでシート状に成形し、さらに、異なる機能を持つチューブを組み合わせた多機能チューブデバイスに展開し、広汎な応用範囲を持つ新しい有機デバイスの創製することをを目的として、本年度は既存の材料に囚われることない、チューブの材質の検討と並行して電極材料、有機半導体材料の探索の実験例として有機半導体の合成から有機フレキシブルチューブデバイスの性能評価までを実施した。1.フレキシブルチューブ基板の材質の検討、電極材料、有機半導体材料の探索 有機フレキシブルチューブデバイスに適用するために化学修飾などを施すことで従来から用いられている有機材料の電子物性を損なわず、新たな機能をも付与する可能性についてデータを蓄積する意味から、フレキシブルチューブ基板、電極材料、有機半導体材料の組み合わせにより、発光デバイスにおいては発光効率を、太陽電池においては変換効率の系統的な実験を実施し、評価、考察を行った。2.素子作製条件の確立 電子デバイスとして駆動させるためには、構成薄膜の緻密性、密着性、平坦性などの膜質が重要であり、チューブの材質、形状だけでなく、用いる半導体の物性によって製膜条件が異なるため、チューブ内に流しこむための流動性を重視して溶媒の種類、溶液濃度、溶液温度、溶液流速、流量、チューブ内温度などを設定し、ある程度の大きさのチューブ径を用いた場合の基本となる素子作製条件を確定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポリマー基板などの上に構築されるフレキシブルデバイスに汎用される有機半導体材料を中心にフレキシブルチューブデバイスへ応用し、作製、評価を行ったが、発光デバイスにおいては発光効率が、太陽電池においては変換効率が著しく悪い結果となった、また、複数本組み合わせたフレキシブルチューブデバイスの実証を試みたものの、高効率化の課題が残った。これは、フレキシブルチューブデバイスとしてのデバイス作製条件を重視するあまり、本来の有機半導体の電子物性を損なったためと考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に収集、解析、体系化されたデータに基づいて、その成果を継続的に発展させるが、具体的な成果が顕著な項目に焦点を絞って実験を集中する。現段階では、複数本組み合わせたフレキシブルチューブデバイスの実証に至らず、単チューブでのデバイスの高効率化が急務である。引き続き電極材料、有機半導体材料の探索を行い、高性能化を目指す。さらに、発光素子のみ、光電変換素子のみという具合に同種のデバイスチューブを並列に配置または格子状に接続して2次元、3次元フレキシブルデバイスを作製する。さらに、発光素子チューブ+光電変換素子チューブのような異種のデバイスチューブを組み合わせてデバイス特性を評価するとともに配線技術を確立する。また、任意の高分子系材料にその他の低分子材料、ナノ材料を混合、分散させた半導体溶液を調製することによりデバイス効率の向上を図る。また、チューブ自体に支持、保護以外の導電性、配向性などの機能をもたせたり、変形チューブ(凹凸構造(テクスチャー構造)など)を使用することで高効率デバイスの作製に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度、フレキシブルデバイスに汎用される有機半導体材料を中心にフレキシブルチューブデバイスへ応用し、作製、評価を行ったが、今後の研究研究展開における課題の解決の指針は得られたものの、材料合成やデバイス作製条件の最適化の遅延などにより効率を議論するまでに至っていない。硬質基板の使用という制約を取り除き、自由度の高い、有機半導体の特徴を最大限に活用したフレキシブルチューブデバイスの電子デバイスとしての有効性を実証するにはデバイス効率の向上が不可欠である。そこで、前年度を踏まえて再度、材料面からアプローチを重点的に実施する。そのためには、有機/金属ハイブリッドポリマーなどの新規材料開発を優先して行い、半導体材料合成に係る物品を購入する。また、デバイス特性を示す従来の高分子系半導体は溶解性、キャリア輸送性を付加するため、化学修飾を施さなければならず、合成、精製が難しくなる傾向がある。材料開発と並行して、自己組織化など高分子の特性を活かしたデバイス作製技術など、新規製膜技術開発するための調査研究を行う。
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