研究課題/領域番号 |
23655182
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
石川 正司 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30212856)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コンデンサー / 電気二重層 / キャパシタ / イオン液体 / ゲル電解質 / 生体高分子 / アルギン酸 / キトサン |
研究概要 |
生体材料としてDNAをカーボンナノチューブに複合化させ、これを電気二重層キャパシタ(EDLC)電極に適用する検討を行った。カーボンナノチューブを酸化することで官能基を付与し、これをアンカーにDNAと複合化させた。その結果、イオン移動を伴う交流周波数領域において、抵抗が顕著に低下することが明らかになった。一方、我々はキャパシタへの新規な生体材料の活用についても探索を開始した。すなわち、生体高分子材料であるアルギン酸あるいはキトサンをホストポリマーとし、イオン液体を含浸させた生体材料由来の新規ゲル電解質を開発し、EDLCへ適用した。その結果、ゲル化によるEDLC性能の低下を防ぎ、さらに電極との親和性を改善させることで、液相のイオン液体電解質を超える充放電特性を実現する可能性を得た。特に本年度では、実用セルについても想定し、バインダーや導電助剤を含む活性炭シート電極とゲル電解質から成る評価セルを構築し、その充放電特性や環境温度試験などを含めた種々の評価を行った。重要な成果として、イオン液体を含むアルギン酸ゲル電解質を用いたEDLCでは、電流密度が増大するにつれて、一般的な溶液のEDLCに比べ出力特性が明確に向上する結果が得られた。この現象は温度に寄らず確認でき、さらに交流インピーダンス測定の結果から、電極/電解質界面のイオン移動抵抗特性が改善されたことが要因であることが立証された。この成果に基づき、高安全性リチウムイオン二次電池を目指した新規な天然高分子ベースのゲル電解質も開発した。一般的にゲル電解質の利用により、電池の出力特性の低下が懸念されるが、本研究にて開発したゲル電解質を用いると、ほぼ液体系と同等の特性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画を拡張した新規な試みとして実施した、天然高分子とイオン液体で界面抵抗を低減させ、高出力を得るアイデアは、キャパシタに留まらずリチウムイオン電池にも適用できることが判った。さらに、申請時に本研究が非ファラデー型のキャパシタのみを想定していたが、このように蓄電池にも適用できるというより広い一般性が見出されたため、明らかに区分(1)として評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究概要と達成度で示したように、本研究における23年度の検討で、新規なアイデアである生体材料を利用した新規高出力ゲル電解質への展開の試みが成功したため、これを中心に今後の研究の展開を図る計画である。アルギン酸やキトサン、場合によってはセルロース系の生体材料ゲルマトリックス材料の構造最適化と、イオン液体の複合化条件の検討、さらには、生体高分子とイオン液体ではない通常の塩との複合化も試み、電解質としての生体材料の適用メリットをさらに究明したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の研究計画に沿い、生体高分子材料とイオン液体、電解質の購入、そしてキャパシタならびにリチウム二次電池の電極材料の購入を行う。また、充放電評価のための試験セル、集電箔などの金属材料も購入する。このように、主に本研究の開発材料を適用するキャパシタならびに電池の構成材料を購入する計画である。
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