研究課題/領域番号 |
23655182
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
石川 正司 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30212856)
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キーワード | コンデンサー / 電気二重層 / キャパシタ / イオン液体 / ゲル電解質 / 生体高分子 / アルギン酸 / キトサン |
研究概要 |
我々は種々の天然高分子をEDLCの構成材料、特にゲル電解質として利用することで優れた出力特性が得られることを報告した。これは活性炭などの炭素系活物質に対する高い親和性により、電極/電解質界面の抵抗が軽減されるためである。また、この効果は活性炭繊維布—天然高分子複合電極においても得られている。本年度は、これまでに得られた知見を最大限に活用し、さらなる性能向上と実用化を目的として、天然高分子の合材電極用バインダーとしての可能性について検討した。バインダー用天然高分子としてアルギン酸塩を用いて合材電極を作製し、このEDLC特性を評価した。 活物質に市販のヤシ殻由来活性炭、導電助剤、バインダーにアルギン酸ナトリウム(Alg)からなる電極を作製した。比較用電極として、バインダーにPVdF、CMCを用いたものを同様の条件で作製している。作製した電極を用いたモデルセルの放電電流密度1 - 80 A /g におけるレート特性を検討したところ、非常に高い電流密度においてもAlgを用いた系では高い放電容量を示し、特にPVdF系の10倍以上の出力特性を示した。これはAlgの活性炭に対する高い親和性によるものであり、電極内部における界面抵抗が大幅に低減されたと考えられる。この効果は交流インピーダンス試験からも確認できた。また10,000回の充放電サイクルにおいても安定に作動した。さらに、イオン液体を電解液とした系についてもAlgバインダーの効果を確認した。 以上より、AlgのバインダーはEDLCの出力特性の向上に有益な材料であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画を拡張した新規な試みとして実施した、ゲル電解質にとどまらない、バインダーとしての天然高分子利用が極めて有効であることが判った。研究実績の概要で説明したように、同じ活性炭材料を用いながら、レート特性が顕著に改善される効果が見出されたことで、計画以上のメリットが見出されたことが明確に主張できる。このようにバインダーにも適用できるという、より広い一般性が見出されたため、明らかに区分(1)として評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究概要と達成度で示したように、本研究における24年度の検討で、新規なアイデアである生体高分子を利用したバインダーへの展開が成功したため、この研究も主流として加え研究の展開を図る計画である。アルギン酸やキトサン、場合によってはセルロース系の生体材料の構造最適化と、イオン液体の複合化条件の検討、さらには、生体高分子とイオン液体ではない通常の塩との複合化も試み、生体材料のさまざまな適用メリットを究明する予定である。また、一昨年検討して効果が判明した二次電池への適用も並行して行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の研究計画に沿い、生体高分子材料とイオン液体、電解質の購入、そしてキャパシタならびにリチウム二次電池の電極材料の購入を行う。また、充放電評価のための試験セル、集電箔などの金属材料も購入する。このように、主に本研究の開発材料を適用するキャパシタならびに電池の構成材料を購入する計画である。
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