研究課題/領域番号 |
23655184
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 智生 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50205944)
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キーワード | 色素会合体 / ナノ材料 / 光物性 / 分子励起子 / 表面プラズモン |
研究概要 |
色素会合体と貴金属ナノ粒子を近接して配置したナノ構造体では、色素会合体の励起子吸収帯の強度が、近接する貴金属ナノ粒子に誘起される表面プラズモンにより強く影響を受ける。本研究において、この特異な分光特性と表面プラズモン励起に大きな影響を与えるナノ粒子の形態との関係を明らかにするため、本年度は次のような研究を行った。(1)表面プラズモン吸収帯が可視域にある銀ナノ粒子に着目し、様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子(本年度は、ディスク状銀ナノ粒子(銀ナノディスク))の作製を試み、その生成反応条件を詳しく検討した。その結果、単分散性は必ずしも良くないものの、望みの軸比と表面プラズモン吸収ピーク位置を持つ銀ナノディスクを作製することができた。単分散性の向上については来年度も引き続き検討する予定である。(2)表面をハロゲン化した様々な軸比をもった銀ナノディスクにシアニン色素を吸着させることによりJ会合体被覆銀ナノディスクを作製し、その吸収・発光特性を検討した。その結果、特異な分光特性の発現強度と、銀ナノディスクの軸比に依存する表面プラズモン吸収ピーク位置との間には相関関係があることを見いだした。(3)会合体を形成する他の色素で覆われた銀ナノ粒子(球状銀ナノ粒子および銀ナノディスク)を作製し、その吸収・発光特性を評価した。シアニン色素以外の色素(ポルフィリン)が会合体として吸着した場合も、シアニン色素の時と同様、特異な分光特性が現れることが明らかになった。これまで、表面プラズモンの影響下に置かれた単分子の分光学的挙動は広く研究されてきたが、表面プラモンと色素会合体に励起されるフレンケル励起子との相互作用について研究された例は少なく本研究は有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の前半で、様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子の作製を試みたところ、その作製条件の設定に想定以上の期間を要した。その結果、種々色素会合体被覆銀ナノ粒子の作製とその分光特性評価は実施できたものの、金ナノ粒子を用いた同様な系に関しては予備的な検討段階にとどまっている。また、銀ナノ粒子を用いた系に関しても、均一性を向上させる新しい方法が最近明らかになり、再評価の必要がある。以上を総合的に判断すると、当初の研究計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23~24年度に実施した、(1)様々な形態をもつ銀ナノ粒子の作製、(2)シアニン色素J会合体被覆銀ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価、(3)会合体を形成する他の色素で覆われた銀ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価を、今後も継続して行うとともに、平成25年度は、貴金属として金にも着目し、(4)様々な形態をもつ金ナノ粒子の作製、(5)シアニン色素J会合体被覆金ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価を試みる。以上の3年間の研究により、貴金属ナノ粒子に近接する色素会合体の特異な分光特性と、ナノ粒子の形態との関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の前半で、様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子の作製を試みたところ、その作製条件の設定に想定以上の期間を要した。その結果、本年度試みる予定であった回転楕円体金ナノ粒子の作製は予備的な検討段階にとどまっており、「次年度に使用する予定の研究費」が生じた。また、銀ナノ粒子に関しても均一性を向上させる新しい方法が最近明らかになり、再評価が必要である。次年度は、様々な形態をもつ色素会合体被覆銀ナノ粒子の作製とその分光特性の再評価、金ナノ粒子を用いた同様な系の作製と分光特性の評価、および日本化学会等における発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとする。なお、平成24年度未使用額のうち57,880円は、3月末に参加した日本化学会出張費であるが、事務処理上4月の支払いとなった。
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