研究課題/領域番号 |
23655185
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉川 浩史 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60397453)
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研究分担者 |
谷藤 尚貴 米子工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (80423549)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ジスルフィド化合物 / 二次電池 / 太陽電池 / 固相合成 |
研究概要 |
ジスルフィド系化合物が有する可逆的なS-S結合の開裂-再結合(酸化-還元)反応は、電池反応への応用が可能である。本研究では、DFT計算などを利用した、電池活物質として機能する適切な分子設計をおこなうとともに、本研究グループが蓄積してきた一連のジスルフィド系化合物のオリジナルな合成手法を用いて、真に2次電池の活物質として利用可能な機能性ジスルフィドの選択的高効率合成を目指す。 今年度は、チオールとの反応性の高いチオスルホン酸エステルに着目し、ヨウ素を活用した無溶媒合成法を用いることにより、新規分子を含めたポリマー前駆体の合成を行った。本反応において、ヨウ素の昇華特性は固体の基質に対して満遍なく浸透させる作用を有しており、試験管内でジスルフィド、スルフィン酸ナトリウム、ヨウ素を軽く混合するだけで、クロスカップリングは進行し、多種多様なジスルフィドポリマー前駆体を得ることに成功した。これらの分子は2つ以上の反応点を持つことから、ジチオールを求核攻撃させることによって新規のジスルフィドポリマーの合成に多数成功した。 このジスルフィドポリマーを正極活物質とするリチウム二次電池を作製して電池特性を評価したところ、ジスルフィドポリマーが従来のリチウムイオン電池の容量を上回る材料であることを明らかにした。ジスルフィドをつなぐ有機基がアルキル基の場合、プラトーは無いものの耐久性は良好である一方で、フェニル基の場合、プラトーが現れるものの耐久性は良くないという現象が見られた。そこで、両者をコポリマーにすることで、双方の長所を有する電池の開発に成功した。このように、放電特性はジスルフィド基をつなぐ有機基によって改善可能となる知見を得た。これらは、ジスルフィドポリマーを自由にデザインできれば、次世代二次電池の良好な電極材料となることを示す重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
固相反応により、様々な新規ジスルフィドポリマーを合成することが可能になった点で計画以上に進展したと言える。また、この新規ジスルフィドポリマーを正極活物質に用いることで、従来のリチウムイオン電池よりも大きな容量と安定なプラトー電位領域を得ることができたのは、非常に大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度見出したジスルフィドポリマー合成反応を確立し、さらに様々な機能性ジスルフィドポリマーの作製を行う。これらを電極材料とする二次電池を作製し、その電池特性を計測することにより、耐久性、容量、充電時間などの点で真に実用可能な二次電池の開発を行うことを最終目標とする。なお、これが実現できれば、オール有機で構成された2次電池も可能となり、環境に配慮したエネルギーデバイスを構築できる。また、これらのジスルフィドポリマーは色素増感型太陽電池の電解質としても利用可能なことから、太陽電池への応用も目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度と同じくジスルフィドポリマー作成用の試薬やガラス器具などの消耗品に主に使用する。また、二次電池や太陽電池作製用の消耗品部材にも使用する。その他、研究代表者と研究分担者が打ち合わせや共同研究を行うための旅費や滞在費にも支出する。本研究で得られた成果を国内および国際会議で発表するための旅費にも使用する予定である。
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