研究概要 |
高容量の二次電池を創製するためには正極側に容量の高い活物質を導入することが必須であるが,現在一般的に用いられているリチウム遷移金属酸化物系正極材料では容量の改善に限界がある。本研究では、ジスルフィド基における電気化学的な酸化還元挙動に着目し,導入した新規ポリマーを用いることで、二次電池の高容量化を試みた。 昨年度において合成したジスルフィド基を主鎖に有するポリマーに関する二次電池特性評価を行った際に見出された,ジスルフィド基に結合する有機基が芳香族または脂肪族であることによって,プラトーやくり返し耐久性等の充放電特性に差異が生じる現象が確認されたが,本年度はこの知見を踏まえて,有機基としてo-, m-, p-キシリレン骨格を有するジスルフィドポリマーを作製し電池性能評価を行った.合成はジブロモキシレンから一段階でモノマーとなるチオスルホン酸エステルへ誘導し,これとo-ベンゼンジチオールとの無溶媒クロスカップリングによってジスルフィドコポリマーとした.3種類の生成物を正極活物質(10%)として導入した電池の特性を検討した結果、いずれも一カ所のプラトーと10回放電時まで150Ah/kgの容量を保持することが明らかとなった.これは昨年までの芳香族置換基がプラトーの誘起,脂肪族が良好な繰り返し耐久性を示す傾向を合わせた特性が現れたと考えることができる知見である.今後は、この充放電特性の原因を探るため、in situ NMR測定法を独自に開発して評価することで新たなポリマー設計を行い,材料の最適化を進めていく.それによって実用化に近づく新しい二次電池材料の提案へと繋げていく予定である。
|