研究課題/領域番号 |
23655186
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上田 裕清 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40116190)
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研究分担者 |
三崎 雅裕 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00462862)
小柴 康子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (70243326)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分子配向反応場 / 非接触プロセス / 光異性化 / 一軸配向 / 有機薄膜トランジスタ |
研究概要 |
非接触プロセスによる一軸配向反応場の創成を目的に、シランカップリング処理の最適化および光配向性アゾ基含有ポリアミド酸の修飾について検討し、以下の成果を得た。 トリエトキシシラン末端ジアセチレン( Pentacosa-10,12-diynoic acid 3-triethoxysililpropyl amide:SiDA)のトルエン溶液に酸化膜付き高ドープシリコンを浸漬し酸触媒を用いた脱水反応により化学結合の導入を試みたが、ジアセチレン部位の強い凝集力により均一な膜形成は困難であった。一方、汎用の低分子シランカップリング剤(amino propyl triethoxysilane;APTES)の自己組織化単分子膜をあらかじめ基板に形成し、続いて塩素化ジアセチレン( Pentacosa-10,12-diynoic chloride)を反応させるとアミド結合したナノ構造体が形成された。この反応性基板にカルボン酸末端ジアセチレンを蒸着により積層した有機薄膜トランジスタ(OFET)の移動度は4.06×10⁻³cm²/Vs、ON/OFF比は6.40×10²であった。 また、光配向能を有するアゾ基含有ポリアミド酸の構造の最適化について検討し、アゾ基とアミド酸のスペーサとしてエーテル基を導入すると光反応性が著しく向上し、吸収の二色比も7以上を示し配向分散もシャープになることを見いだした。アゾ基含有ポリアミド酸とAPTESの反応によりアミド基の一部にAPTESが付加してナノ構造構築の反応場となることを見いだした。 別途、主鎖型の光配向発光材料の創成にも取り組み、発光を担うフルオレンユニットと光配向を担うアゾ基の選択により発光能を有する新規光配向ポリマーの創成にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した平成23年度の研究テーマ、(1)アゾ含有ポリイミド配向膜の詳細な物性と構造評価、(2) 分子に付加する官能基の構造の検討と反応条件の検討はほぼ達成し、研究成果として学術報告につながった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、非接触プロセスによる一軸配向反応場の創成を目的に(1)アゾ基含有ポリアミド酸への官能基導入の最適化、(2)反応場へのジアセチレン分子の化学結合と重合、(3)光配向ポリイミド膜上での熱および光転化型有機半導体の非接触配向制御、(4)OFETへの実装と性能評価について検討する。(1)アゾ基含有ポリアミド酸への官能基導入の最適化 前年度に引き続き、アゾ基含有ポリアミド酸薄膜上での反応を検討する。官能基量の定量と熱処理によるイミド化度および配向度を紫外可視分光(UV-Vis) 測定、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)測定、並びにSEM、TEMおよびAFM観察、XRD測定により評価する。(2)反応場へのジアセチレン分子の化学結合と重合 カルボン酸末端ジアセチレン修飾熱酸化シリコン基板上に蒸着したジアセチレン膜に偏向紫外光を照射し、異方的重合による配向の低次元化を検討する。併せて、光配向アゾ基含有ポリイミド酸のポリマー鎖に沿った「反応場」に反応性有機半導体を積層し、共有結合した無機/有機構造体の創成を検討する。(3)配向ポリイミド膜上での熱および光転化型有機半導体の非接触配向制御 配向ポリイミド膜上に熱および光転化型可溶性ペンタセンを塗布成膜し、架橋付加成分の脱離過程と結晶化過程並びに配向構造を評価する。さらにレーザーアニールによる熱転化と配向性付与についても検討する。(4)OFETへの実装と性能評価 (2)および(3)で作成した薄膜をOFETに実装し、トランジスタ特性を評価する。多結晶膜との比較から配向制御と半導体特性との関連を求め、有機半導体薄膜の機能化に必要な学術的・技術的知見を集積する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として、研究に必要な薬品、ガラス器具、石英ガラス基板、シリコン基板、電子顕微鏡用品、光学部品を計画している。また研究のための情報収集、研究成果発表は必要なので国内旅費として調査研究旅費、研究成果発表旅費を計上する。研究成果を発表するため論文投稿を行うがそのための英文校閲費、論文別刷費も計上する。
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