研究概要 |
イオンの伝導と拡散は、現代科学技術の最も重要な分野の一つである。イオン伝導・拡散機構にとって、活性化エネルギーと結晶構造の関係を明らかにし,未来の材料開発に結びつけることが重要である。本課題「核・電子密度分布からイオン伝導の活性化エネルギーは決められるか?」は、エネルギー・環境材料のキーである,イオン伝導体とイオン-電子混合伝導体におけるイオン拡散の活性化エネルギーを、高温における精密結晶構造解析により決定したボトルネックにおける可動イオンの生成エネルギーと比較した。本年度はK2NiF4型酸化物であるドープしたプラセオジムニッケル酸化物について詳しく検討した。本研究で調べたPr2(Ni0.75Cu0.25)0.95Ga0.05O4+δとPr2Ni0.75Cu0.25O4+δの酸素透過率の見かけの活性化エネルギーとボトルネックにおける酸化物イオンの生成エネルギーは両方とも、温度と共に減少することを確認した。本研究では、「酸素透過率 ∝ キャリア濃度 × 移動度」であることに着目し、(酸素透過率/キャリア濃度) = (酸素透過率/酸素過剰量δ)のログを絶対温度の逆数に対してプロットして活性化エネルギーを見積もった。この活性化エネルギーは温度にあまり依存しないことが見いだされた。同様に、(最小核密度/酸素過剰量δ)のログを絶対温度の逆数に対してプロットして得られた、ボトルネックにおける酸化物イオンの生成エネルギーも温度にあまり依存しないことが見いだされた。このことは酸素過剰量(格子間酸素量)δがイオン拡散のキャリア濃度に比例することを意味している。Pr2(Ni0.75Cu0.25)0.95Ga0.05O4+δでは、Gaの添加により大量の過剰酸素が導入され、キャリア濃度が増加することにより、高い酸素透過率が実現されることを解明した。
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